認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)は、所轄庁(都道府県知事、または事務所が1つの指定都市の区域内だけにある法人は指定都市の長)の認定を受けた NPO 法人です。認定を受けると、寄付をした個人は寄附金控除か税額控除を選べるようになり、法人の寄付にも別枠の損金算入限度額が使えます。寄付を頼むときに「寄付が税の控除の対象になります」と言えることが、最大の違いです。

一方で、認定を受けている法人は多くありません。内閣府NPOホームページの「認証・認定数の遷移」では、2026年7月末現在で認証を受けた NPO 法人が48,813法人、認定を受けた法人(特例認定を含む)が1,313法人です。要件を満たせるかどうかは、申請の直前に準備するのではなく、実績判定期間の帳簿と寄附者名簿の付け方で決まります。

この記事では、特定非営利活動促進法(以下「NPO 法」)の条文と、内閣府・国税庁の公表資料にもとづいて、要件・申請の順番・認定後の義務を整理します。様式や事前相談の受付方法は所轄庁ごとに違うため、最後は必ず所轄庁の手引きで確かめてください。

認定の基準は9つ(NPO 法第45条)

所轄庁は、申請した法人が第45条第1項の各号の基準に適合すると認めるとき、認定をします。まず全体を一覧で押さえます。

基準実務で確かめること
第1号パブリック・サポート・テスト(PST)に適合相対値・絶対値・条例個別指定のどれかを選ぶ
第2号共益的な活動の割合が50%未満会員だけが便益を受ける活動の割合
第3号運営組織と経理が適切役員の親族等・特定の法人の関係者がそれぞれ3分の1以下、社員の表決権が平等、帳簿の備付け、費途不明の支出がない
第4号事業活動が適切宗教・政治活動をしていない、特別の利益を与えていない、事業費の80%以上が特定非営利活動の事業費、受け入れた寄付の70%以上を特定非営利活動の事業費に充てている
第5号情報公開事業報告書等・役員名簿・定款等を事務所で閲覧させる
第6号事業報告書等の提出各事業年度の事業報告書等を所轄庁に出している
第7号法令違反等がない不正の行為・公益に反する事実がない
第8号設立から1年超申請する事業年度の初日に、設立から1年を超えている
第9号実績判定期間を通じた適合第3号・第4号イロ・第5〜7号を期間中ずっと満たしている

このほか第47条に欠格事由があります。役員に一定の刑罰を受けて5年を経過しない者や暴力団の構成員等がいる法人、国税・地方税の滞納処分の執行中か終了から3年を経過しない法人、重加算税・重加算金を課されて3年を経過しない法人などは、基準を満たしていても認定を受けられません。

実績判定期間の数え方

基準の多くは「実績判定期間」の実績で判定されます。NPO 法第44条第3項は、実績判定期間を次のように定めています。

  • 初めて認定を受ける法人:直前に終了した事業年度の末日以前2年内に終了した各事業年度のうち、最も早い事業年度の初日から末日まで
  • 認定を受けたことがある法人(更新など):同じく以前5年内に終了した各事業年度

事業年度が4月〜3月の法人が初めて申請する場合、申請の時点で直前に終わった事業年度と、その前の事業年度の2期分の実績を見られる、と考えると分かりやすいでしょう。この2期分の寄附者名簿と会計の記録が、申請の材料そのものになります。

PST(パブリック・サポート・テスト)の3つの基準

PST は「広く市民からの支援を受けているか」を判断する基準で、内閣府NPOホームページは認定基準のポイントと説明しています。次の3つからどれか1つを選んで満たせば足ります。

基準内容(内閣府NPOホームページの説明と第45条第1項第1号)向いている法人
相対値基準実績判定期間の経常収入金額のうち、寄附金等収入金額の割合が5分の1以上収入の規模に比べて寄付の比重が大きい法人
絶対値基準各事業年度に3,000円以上寄付した人(判定基準寄附者)が年平均100人以上少額でも寄付者の人数が多い法人
条例個別指定申請書を出した日の前日に、事務所のある都道府県・市区町村の条例で個別に指定されている自治体の個別指定の制度がある地域の法人

判定で気をつける点を条文から拾っておきます。

  • 絶対値基準で数える寄附者からは、その法人の役員と、役員と生計を一にする人が除かれます。 個人の寄附者と生計を一にする人がいる場合は、合わせて1人と数えます
  • 数えられるのは、寄附者の氏名(法人は名称)などが明らかな寄付だけです。匿名の募金箱の寄付は、人数には入りません
  • 相対値基準の分母(経常収入金額)からは、国や地方公共団体などからの補助金、臨時的な収入などが除かれ、分子の寄附金からは、同じ人からの寄付のうち一定額を超える部分などが除かれます。細かな計算方法は内閣府令と所轄庁の手引きで確かめてください
  • 条例個別指定を選んだ法人は、申請のときに寄附者名簿を添付しなくてよいことになっています(第44条第2項ただし書)

どの基準を選ぶかで、ふだん付けておくべき記録が変わります。 絶対値基準を狙うなら、寄付を受けた日ごとに氏名・住所・金額・受領日を記録し、同じ人の1年間の合計が3,000円以上になるかを数えられる形にしておく必要があります。これは寄附者名簿(第44条第2項第1号)の記載事項と同じです。

設立間もない法人は「特例認定」を検討する

設立から5年を経過していない法人には、PST を満たさなくても受けられる特例認定があります(NPO 法第58条・第59条)。内閣府によれば、平成28年の法改正で「仮認定」から「特例認定」に名称が変わりました。

認定特例認定
対象設立から1年超の NPO 法人申請日の前日に設立から5年を経過していない NPO 法人
PST必要不要(第45条第1項第2号〜第9号の基準は必要)
有効期間5年(更新できる)3年(更新なし)
受けられる回数更新を重ねられる認定・特例認定を受けたことがない法人が1回だけ
実績判定期間初回2年、以後5年2年
みなし寄附金制度適用あり適用なし

特例認定の3年のあいだに寄付者を増やし、期間が終わるまでに PST を満たして認定に進む、という使い方が想定されています。特例認定を受けたからといって自動的に認定に移るわけではないので、特例認定を受けた時点から、PST を満たす記録づくりを始めてください。

申請の準備の順番

  1. 実績判定期間を確定する:直前に終わった事業年度から逆算し、どの事業年度の実績を使うかを決めます。
  2. 事業報告書等の提出漏れがないか確かめる:各事業年度の事業報告書等を所轄庁に出していることが基準の1つです(第45条第1項第6号)。
  3. 寄附者名簿を整える:寄附者ごとの氏名・住所・金額・受領日。会費と寄付が混ざっている場合は区分を見直します。
  4. PST の基準を選び、試算する:相対値なら寄附金等の割合、絶対値なら3,000円以上の寄附者の年平均人数を数えます。
  5. 第45条の他の基準を自己点検する:役員構成(親族等が3分の1以下か)、事業費の割合(80%以上か)、寄付の充当(70%以上か)、共益的活動の割合(50%未満か)。
  6. 欠格事由に当たらないか確かめる:役員の経歴、税の滞納・重加算税の有無。
  7. 所轄庁に相談する:申請の前に、所轄庁の手引きで相談の受付方法を確かめて相談します。書類の書き方や、会計の区分の考え方をここで確かめます。
  8. 申請する:申請書に、(1) 寄附者名簿、(2) 基準に適合する旨と欠格事由に当たらない旨を説明する書類、(3) 寄附金を充当する予定の具体的な事業の内容を記載した書類を添えます(第44条第2項)。特例認定の申請では寄附者名簿は不要です。

自己点検のチェックリスト

  • 申請する事業年度の初日に、設立から1年を超えている
  • 実績判定期間のすべての事業年度の事業報告書等を所轄庁に提出済み
  • 寄附者名簿に、寄附者ごとの氏名・住所・金額・受領日が残っている
  • 役員とその配偶者・三親等以内の親族などが、役員総数の3分の1以下
  • 特定の法人の役員・使用人などが、役員総数の3分の1以下
  • 社員の表決権が平等(定款と実際の運用)
  • 事業費の総額のうち、特定非営利活動の事業費が80%以上
  • 受け入れた寄付の総額の70%以上を、特定非営利活動の事業費に充てている
  • 会員だけが便益を受ける活動などの割合が50%未満
  • 役員・社員・寄附者などに特別の利益を与えていない
  • 税の滞納処分・重加算税の対象になっていない

認定後に毎年やること

認定はゴールではなく、毎年の書類が増えます。NPO 法で定められている主なものは次のとおりです。

何をいつ根拠
前事業年度の寄附者名簿、役員報酬・職員給与の支給に関する規程、収益の明細などの書類を作成し、事務所に備え置く毎事業年度初めの3か月以内第54条第2項
上の書類のうち役員報酬規程等を所轄庁に提出(寄附者名簿は提出しない)毎事業年度1回第55条第1項
助成金を支給したときの実績の書類を作成・提出支給したとき第54条第3項・第55条第2項
代表者の氏名の変更の届出変更があったとき遅滞なく第53条第1項
有効期間の更新の申請満了日の6か月前から3か月前まで第51条第3項

事業報告書等の提出(第29条)は、認定の有無にかかわらず毎年必要です。2以上の都道府県に事務所がある認定NPO法人は、所轄庁のほか、事務所のある他の都道府県の知事にも提出します(第52条第1項)。

寄付者と法人が受けられる税制上の優遇

認定(特例認定を含む)を受けると、寄付者の側で次の優遇が使えるようになります。数値は内閣府NPOホームページと国税庁タックスアンサーNo.1263(令和8年4月1日現在の法令等)によります。

対象優遇内容
個人(所得税)所得控除か税額控除を選択所得控除:寄附金の合計額−2,000円。税額控除:(寄附金の合計額−2,000円)×40%。寄附金は総所得金額等の40%、税額控除額は所得税額の25%が限度
個人(住民税)条例で指定された場合(寄附金−2,000円)に、都道府県の指定4%、市区町村の指定6%、両方の指定10%を掛けた額を控除。総所得金額等の30%が限度
法人特別損金算入限度額一般の寄附金とは別枠。資本のある法人は(期末資本金の額×0.375%+所得金額×6.25%)×1/2
認定NPO法人自身みなし寄附金制度収益事業から特定非営利活動の事業に支出した額を寄附金とみなし、所得金額の50%または200万円のいずれか多い額まで損金算入。特例認定には適用なし

個人の寄付者が税額控除を受けるには、確定申告で、寄附金の額・受領した旨・受領年月日を証する書類(寄附者の住所・氏名が書かれたもの)などを添える必要があります(国税庁タックスアンサーNo.1263)。認定を受けたら、受領書の様式に住所・氏名・金額・受領日が入っているかを、まず確かめてください。

よくあるつまずき

  • 寄附者名簿が作れない:寄付を受けた記録に住所がない、同じ人の寄付を名寄せできない。申請の2年前から記録の形を決めておく必要があります。
  • 会費と寄付の区別があいまい:「賛助会費」に返礼品がある、会報の購読料と区別していないなど。何を寄付として数えるかは、所轄庁の手引きで確かめてください。
  • 事業報告書等の提出漏れ:過去の1年分でも出していないと基準を満たしません。
  • 役員の構成:家族で理事を固めている法人は、3分の1の基準に当たります。
  • 更新の申請期間を過ぎる:満了日の6か月前から3か月前までという期間は短いので、認定を受けた日に更新の時期を予定に入れておきます。

まとめ

  • 認定は所轄庁が行う。基準は NPO 法第45条の9つと、第47条の欠格事由
  • PST は相対値(寄附金等が経常収入の5分の1以上)、絶対値(3,000円以上の寄附者が年平均100人以上)、条例個別指定から1つ選ぶ
  • 初めての申請の実績判定期間は2年。その期間の寄附者名簿と会計の記録が申請の材料になる
  • 設立5年以内なら PST なしの特例認定(有効期間3年・1回限り)がある
  • 認定後は毎事業年度、役員報酬規程等の作成・提出が加わり、5年ごとに更新が必要

申請書の様式と添付書類の細部は所轄庁で異なります。準備を始めた段階で、所轄庁の手引きを取り寄せ、事前相談をしてください。

参考資料