寄付を増やすには、「お願いする仕組み」「受け取って記録する仕組み」「お礼と報告をする仕組み」の3つを同時に整えることが近道です。とくに、単発の寄付をした人に継続寄付を案内できる窓口と、寄付者ごとの記録(氏名・住所・金額・受け入れた年月日)を最初から用意しておくと、寄付は「その年だけの収入」から「毎年見込める財源」に変わっていきます。

内閣府の「2023年度(令和5年度)特定非営利活動法人に関する実態調査」を見ると、寄付の集まり方は法人によって大きく分かれています。

前事業年度の個人からの寄付認証法人認定・特例認定法人
寄付人数(中央値)0人65人
寄付金額(中央値)0万円94.8万円
個人の寄付者が0人の法人55.0%
主な収入源が「個人や民間(企業)からの寄附金」6.1%25.3%

取り組みの差もはっきりしています。寄付への取り組みを尋ねた設問では、認証法人の69.2%が「特に取り組んでいることはない」と答えました。一方、認定・特例認定法人では「寄附の受入状況とその活用などに関する資料の作成・公表」が52.6%、「SNS を活用した情報発信」が42.7%でした。寄付へのお礼についても、認定・特例認定法人の87.4%が「お礼状や活動報告、無料の会報などを渡している」のに対し、認証法人では「特に何もしていない」が58.2%でした。

寄付を集めている法人は、寄付の使い道を公表し、お礼と報告をしている。この記事では、その仕組みを順に作る手順を整理します。

寄付の種類を整理する

まず、自団体が受け付ける寄付の種類を決めます。

種類特徴準備すること
単発の寄付1回ごとの寄付。入口として最も多い振込先や決済の窓口、受領書の発行
継続寄付(毎月・毎年)定額を定期的に受け取る。翌年の収入の見込みが立つ定期的な引き落としや決済の方法、金額の変更・停止の受付方法
使途を指定された寄付寄付者が使い道を決める使途ごとの管理と報告
現物の寄付食品、衣料品、日用品など受け入れる物の基準、記録と評価の方法
法人からの寄付企業などからの寄付寄付の目的、報告の方法、名称の公表の可否

内閣府の同じ調査では、個人からの現物寄付の大部分は「活動において供する物品」(食品、衣料品、日用品、マスクなど)で、認証法人で96.2%、認定・特例認定法人で93.9%でした。

手順1 使い道と必要な金額を言葉にする

寄付をお願いする前に、次の3点を決めます。

  1. 何に使うのか:事業名だけでなく、誰のどんな状況が変わるのか
  2. いくらで何ができるのか:たとえば「月額いくらで、何人分の何が続けられる」のように、自団体の予算から計算した数字
  3. いつまでに、いくら必要か:年間の目標額と、その根拠になる事業計画

数字は、活動予算書や前年度の活動計算書から計算します。数字の根拠を説明できると、寄付者が金額を決めやすくなります。活動計算書の読み方は「NPO法人会計基準の基本」で解説しています。

手順2 受け取りと記録の仕組みを作る

記録する項目

寄付を受け取ったら、寄付者ごとに次の項目を記録します。

項目理由
寄付者の氏名(法人は名称)お礼と報告、受領書の発行
住所同上。認定NPO法人の寄附者名簿の記載事項
寄付の金額会計の記録と受領書
受け入れた年月日会計の計上時期と受領書
使途の指定の有無と内容使途ごとの管理と報告
継続寄付かどうか、連絡の可否次のお願いと報告の方法を決める

氏名・住所・金額・受け入れた年月日の4項目は、特定非営利活動促進法(以下「NPO 法」)が定める寄附者名簿の記載事項です(第44条第2項)。認定NPO法人の申請では実績判定期間の寄附者名簿が必要になり、認定を受けた後も毎事業年度初めの3か月以内に前事業年度の寄附者名簿を作成し、5年間保存します(第54条第2項)。認定をまだ目指していなくても、最初からこの4項目で記録しておくと後の手戻りがありません。認定の要件は「認定NPO法人の要件と申請」にまとめています。

受領書

寄付者に渡す受領書(領収書)には、寄付の金額、受け取った旨、受領年月日、寄付者の住所・氏名を記載しておきます。認定・特例認定NPO法人への寄付で寄付者が確定申告をするときは、これらを証する書類が必要です(国税庁タックスアンサーNo.1263)。

個人情報の扱い

申込フォームや振込票などで寄付者本人から直接書面(電磁的記録を含む)で個人情報を受け取るときは、あらかじめ利用目的を明示します(個人情報保護法第21条第2項)。「受領書の発行、お礼と活動報告の送付に使います」のように、申込の画面や書面に書いておきます。名簿の管理方法は「NPO事務局の業務の整理」でも触れています。

会計での扱い

NPO法人会計基準では、受取寄付金は確実に入金されることが明らかになった場合に収益として計上します(本文13)。寄付者の意思で使途が制約されている寄付は、受け入れた年度の収益として計上するとともに、使途ごとに受入金額、減少額、事業年度末の残高を注記します(本文27)。この注記は、そのまま寄付者への報告の材料になります。

手順3 お願いする

お願いの場は、団体の活動を知っている人から順に広げます。

相手お願いの場押さえること
会員・ボランティア・利用者の家族など総会、会報、活動の現場すでに活動を知っている人。継続寄付の案内を中心に
単発で寄付をした人お礼状、活動報告お礼と報告のあとに継続寄付を案内する
活動をまだ知らない人ホームページ、SNS、イベント使い道と金額の例を示し、寄付の窓口のページに案内する
企業個別の相談寄付の目的と報告の方法を先に示す

寄付の窓口は自団体のホームページに常設し、SNS やイベントからはそのページに案内します。ホームページに載せる情報の全体は「NPOのホームページに載せるべき情報」で整理しています。

手順4 お礼と報告をする

寄付を続けてもらえるかどうかは、寄付の後の報告で決まります。

時期伝えること
受け取ってすぐお礼と受領書
活動の節目寄付で何ができたか(件数、人数、写真など。写っている人の了承を得たもの)
事業年度の終わり年間の寄付の受入額と使い道、使途指定の寄付の残高
継続寄付の更新時期翌年の計画と、継続のお願い

NPO 法人は、毎事業年度初めの3か月以内に前事業年度の事業報告書・計算書類などを作り、所轄庁に提出します(NPO 法第28条・第29条)。所轄庁はこれらを閲覧・謄写の求めに応じて公開します(第30条)。寄付者向けの報告は、この事業報告書の内容を寄付者の関心に合わせて書き直すと作りやすくなります。事業報告書の作り方は「NPO法人の事業報告書」で解説しています。

税制上の優遇の違いを正しく伝える

寄付のお願いで「寄付が税の控除の対象になります」と書けるかどうかは、法人の種類で変わります。

寄付先所得税個人住民税
認定・特例認定NPO法人所得控除(寄附金の合計額−2,000円)か、税額控除((寄附金の合計額−2,000円)×40%、所得税額の25%が限度)を選択条例で指定された寄付金は控除の対象
上記以外の NPO 法人内閣府の案内では、所得税の控除の対象は認定・特例認定NPO法人への寄付住民の福祉の増進に寄与する寄付金として条例で個別に指定されている場合は控除の対象

出典:内閣府NPOホームページ「個人が認定・特例認定NPO法人に寄附した場合」、国税庁タックスアンサーNo.1263

認定を受けていない法人が「控除が受けられます」と書くと、寄付者に誤解を与えます。条例の指定の有無は、都道府県・市区町村の案内で確かめてから記載してください。

寄付の仕組みのチェックリスト

  • 寄付の使い道と、金額ごとにできることを言葉と数字で説明できる
  • 受け付ける寄付の種類(単発・継続・使途指定・現物・法人)を決めた
  • 継続寄付の窓口と、金額の変更・停止の受付方法を用意した
  • 寄付者ごとに氏名・住所・金額・受け入れた年月日を記録している
  • 受領書に金額・受け取った旨・受領年月日・寄付者の住所氏名が入っている
  • 申込の画面や書面に個人情報の利用目的を書いた
  • 使途指定の寄付を使途ごとに管理し、残高を報告できる
  • お礼と受領書をすぐに送る担当と手順を決めた
  • 年1回以上、寄付の受入額と使い道を寄付者に報告している
  • 税の控除について、自団体の法人の種類と条例の指定に合った表現にしている

まとめ

寄付が集まる法人と集まらない法人の差は、内閣府の調査が示すとおり、使い道の公表とお礼・報告の有無にはっきり出ています。使い道と金額を言葉にし、寄付者ごとの記録と受領書を整え、継続寄付の窓口を常設し、年に1度以上報告する。この3つの仕組みを順に作ることが、寄付を毎年の財源に育てる土台になります。

参考資料