NPO 法人は、毎事業年度初めの3か月以内に前事業年度の「事業報告書等」を作って事務所に備え置き、毎事業年度1回、所轄庁(都道府県知事、または事務所が1つの指定都市の区域内だけにある法人は指定都市の長)に提出します(特定非営利活動促進法〈以下「NPO 法」〉第28条第1項・第29条)。事業報告書等は1枚の報告書ではなく、5種類の書類の束です。

提出された書類は、所轄庁で誰でも閲覧・謄写できます(個人の住所の部分を除く。第30条)。寄付者や助成団体、行政の担当者が団体を調べるときに最初に見る資料でもあります。一方で、3年以上出さないと設立の認証を取り消されることがあります(第43条第1項)。

この記事では、NPO 法の条文にもとづいて、書類の中身、決算から提出までの順番、あわせて必要な貸借対照表の公告を整理します。様式や提出方法の細部は所轄庁の条例で決まるので、最後は所轄庁の手引きで確かめてください。

事業報告書等の5つの書類

NPO 法第28条第1項が定める「事業報告書等」は、次の書類です。

書類中身作り方の要点
事業報告書前事業年度に行った事業の内容定款に書いた事業の種類ごとに、実施した内容・日時・場所・対象者などを書く(様式は所轄庁)
計算書類(活動計算書・貸借対照表)活動の収益と費用、期末の資産・負債・正味財産会計簿にもとづいて、実績と財政状態を明瞭に表示する(第27条第3号)
財産目録期末の資産と負債の明細貸借対照表と金額を一致させる
年間役員名簿前事業年度に役員だったことがある全員の氏名・住所(居所)と、前事業年度の報酬の有無年度の途中で辞めた役員・就任した役員も含める
社員のうち10人以上の名簿前事業年度の末日の社員のうち10人以上の氏名(法人は名称と代表者)と住所(居所)期末日時点の社員から10人以上

計算書類の作り方は、NPO 法第27条の会計の原則に従います。会計簿は正規の簿記の原則に従って記帳し、採用した会計処理の基準は毎事業年度継続して適用します(第27条第2号・第4号)。

事務所に備え置くもの

作成した事業報告書等は、作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日まで、事務所に備え置く必要があります(第28条第1項)。このほか、役員名簿と定款等(定款、その認証と登記に関する書類の写し)も備え置きます(第28条第2項)。社員その他の利害関係人から閲覧の請求があれば、正当な理由がある場合を除いて閲覧させなければなりません(第28条第3項)。

決算から提出までの順番

事業年度が4月1日〜3月31日の法人なら、6月30日までに作成・備置きを終えることになります。提出の期限の定め方は所轄庁の条例によるため、自団体の所轄庁の手引きで確かめてください。

  1. 会計を締める:未払金・未収金、前払費用など期末の整理をして、会計簿を確定します。
  2. 計算書類と財産目録を作る:活動計算書・貸借対照表・財産目録。貸借対照表と財産目録の金額を合わせます。
  3. 監事の監査を受ける:監事の職務には、理事の業務執行の状況と法人の財産の状況の監査があります(第18条第1号・第2号)。監査の時期と方法は定款の定めに従います。
  4. 理事会・総会で承認を得る:事業報告と決算を総会と理事会のどちらで承認するかは定款で決まります。自団体の定款の「総会の議決事項」「理事会の議決事項」を確かめてください。
  5. 事業報告書・年間役員名簿・社員10人以上の名簿をそろえる:年度中の役員の就任・退任を議事録と役員変更届の控えで突き合わせます。
  6. 事務所に備え置く:毎事業年度初めの3か月以内(第28条第1項)。
  7. 所轄庁に提出する:毎事業年度1回(第29条)。所轄庁の様式・提出方法(窓口・郵送・電子申請など)に従います。
  8. 貸借対照表を公告する:作成後遅滞なく、定款で定めた方法で(第28条の2)。

提出前のチェックリスト

  • 事業報告書の事業の種類が、定款に書いた事業の種類と一致している
  • 「その他の事業」を行っている場合、特定非営利活動に係る事業と会計を区分している(第5条第2項)
  • 貸借対照表と財産目録の金額が一致している
  • 年間役員名簿に、年度中に退任・就任した役員を含めた
  • 報酬を受けた役員が役員総数の3分の1以下になっている(第2条第2項第1号ロ)
  • 社員の名簿は期末日時点の社員で、10人以上を記載した
  • 事業報告と決算を、定款で定めた機関で承認した記録(議事録)がある
  • 所轄庁の最新の様式を使っている

貸借対照表の公告も毎年必要

NPO 法人は、事業報告書等とは別に、前事業年度の貸借対照表を作成後遅滞なく公告しなければなりません(第28条の2第1項)。内閣府NPOホームページによれば、この公告の制度は平成30年10月1日に施行されました。公告の方法は、次のうち定款で定めた方法です。

方法内容注意点
官報官報に掲載貸借対照表の要旨で足りる(第28条の2第2項)
日刊新聞紙時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載要旨で足りる
電子公告自団体のホームページなどに掲載作成の日から5年が経過した日を含む事業年度の末日まで継続して掲載(第28条の2第4項)
その他の方法不特定多数の者が認識できる状態に置く方法として内閣府令で定めるもの東京都は主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法を示している

内閣府NPOホームページは、内閣府NPO法人ポータルサイトで貸借対照表を公告でき、経費はかからないと案内しています。定款の公告方法の書き方には内閣府の記載例があります。どの方法を選ぶにしても、定款に書いた方法と実際の公告の方法を一致させることが大切です。

なお、現行の組合等登記令の別表では、NPO 法人の登記事項は「代表権の範囲又は制限に関する定めがあるときは、その定め」とされており、資産の総額は登記事項に含まれていません。貸借対照表の公告は、毎年の決算の公表の手段として位置づけられています。

出さない・遅れるとどうなるか

事態根拠内容
提出を怠った第80条第5号理事・監事・清算人が20万円以下の過料に処せられることがある
備置きをしない・不実の記載第80条第4号同上
貸借対照表の公告をしない第80条第7号同上
3年以上にわたって提出しない第43条第1項所轄庁は設立の認証を取り消すことができる

活動が少なかった年でも、NPO 法第29条は「毎事業年度一回」の提出を求めています。活動の実績がほとんどない場合の書き方は、所轄庁に相談してください。

事業報告書は「団体の履歴書」として読まれる

事業報告書等は、所轄庁での閲覧のほか、内閣総理大臣と所轄庁が整備するデータベース(内閣府NPO法人ポータルサイト)を通じた公表が想定されています(第72条)。第72条第2項は、所轄庁と NPO 法人がこのデータベースに情報を記録して積極的に公表するよう努めると定めています。

寄付や助成の申請を受ける側は、過去の事業報告書で「何を、どれだけ、誰に対して行ったか」を確かめます。義務として最低限を書くだけでなく、次の点を押さえると、外部の人に伝わる報告書になります。

  • 事業の種類ごとに、実施回数・参加者数・対象者などの数字を書く
  • 前年度と比べて何が変わったかを1〜2文で書く
  • 活動計算書の事業費の内訳と、事業報告書の事業の区分をそろえる

認定NPO法人を目指す場合は、実績判定期間の各事業年度に事業報告書等を提出していることが認定の基準の1つです(第45条第1項第6号)。認定の要件の全体は認定NPO法人の要件と申請で整理しています。

まとめ

  • 事業報告書等は、事業報告書・計算書類・財産目録・年間役員名簿・社員10人以上の名簿の5つ
  • 毎事業年度初めの3か月以内に作成して事務所に備え置き、毎事業年度1回、所轄庁に提出する
  • 貸借対照表は、作成後遅滞なく定款で定めた方法で公告する(内閣府NPO法人ポータルサイトなら経費はかからない)
  • 提出を怠ると過料の対象になりうる。3年以上出さないと設立の認証を取り消されることがある
  • 様式・提出方法・期限の細部は所轄庁の条例と手引きで確かめる

参考資料