NPO法人会計基準は、NPO 法人の決算書(活動計算書・貸借対照表・財産目録)の作り方を定めた統一ルールです。2010年7月20日に民間の NPO 法人会計基準協議会が策定し、2011年11月20日と2017年12月12日に一部改正されました。法律ではないため採用は任意ですが、内閣府の「2023年度(令和5年度)特定非営利活動法人に関する実態調査」では、採用している会計基準として「NPO法人会計基準」を挙げた法人が認証法人で68.7%、認定・特例認定法人で87.9%と最も多くなっています。

法律の側では、特定非営利活動促進法(以下「NPO 法」)第27条が会計の原則を定め、2012年4月1日施行の改正で、作成する計算書類は「活動計算書と貸借対照表」になりました。つまり、NPO 法人会計基準の採用は任意でも、活動計算書を作ること自体は法律上の義務です。

この記事では、基準の本文と注解にもとづいて、活動計算書の構造、計上のルール、そして決算書を読むときの着眼点を整理します。

NPO 法の会計の原則(第27条)

基準の前提として、NPO 法第27条の原則を押さえます。

原則
第2号会計簿は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳する
第3号計算書類(活動計算書と貸借対照表)と財産目録は、会計簿に基づいて、活動に係る事業の実績と財政状態に関する真実な内容を明瞭に表示する
第4号採用する会計処理の基準と手続は、毎事業年度継続して適用し、みだりに変更しない

さらに、その他の事業(特定非営利活動に係る事業以外の事業)を行う場合は、その会計を区分し、特別の会計として経理しなければなりません(第5条第2項)。

NPO法人会計基準で作る書類

基準の本文(第8項)は、NPO 法人が財務諸表(活動計算書と貸借対照表)と財産目録を作ることを定め、第31項で財務諸表に注記を付けることを求めています。

書類何を表すか(基準の本文)
活動計算書その事業年度に発生した収益・費用・損失を計上し、すべての正味財産の増減の状況を表示して、活動の状況を表す(第9項)
貸借対照表事業年度末のすべての資産・負債・正味財産の状態を表示する(第10項)
財産目録事業年度末のすべての資産と負債の名称・数量・価額などを詳しく表示する(第11項)
財務諸表の注記重要な会計方針、事業費の内訳、使途が制約された寄付等の内訳、固定資産・借入金の増減、役員とその近親者との取引など(第31項)

これらは、所轄庁に毎年提出する事業報告書等の「計算書類」と「財産目録」にあたります。提出の手順はNPO法人の事業報告書で解説しています。

活動計算書の構造

活動計算書は、経常収益・経常費用・経常外収益・経常外費用の4つに区分します(注解 注1)。様式1の並びは次のとおりです。

区分主な科目読み方
Ⅰ 経常収益受取会費、受取寄付金、受取助成金等、事業収益、その他収益通常の活動から生じる収益。何に支えられている団体かが分かる
Ⅱ 経常費用事業費(人件費・その他経費)、管理費(人件費・その他経費)通常の活動に要する費用
当期経常増減額経常収益計 − 経常費用計ふだんの活動で正味財産が増えたか減ったか
Ⅲ 経常外収益固定資産売却益、過年度損益修正益など臨時的なもの
Ⅳ 経常外費用固定資産売却損、過年度損益修正損など臨時的なもの
当期正味財産増減額税引前当期正味財産増減額から法人税、住民税及び事業税を差し引いた額この1年で正味財産がどれだけ増減したか
次期繰越正味財産額前期繰越正味財産額 + 当期正味財産増減額貸借対照表の正味財産と一致する

企業の損益計算書と似ていますが、「利益」ではなく「正味財産の増減」として表す点が違います。

事業費と管理費

基準は、通常の活動に要する費用を事業費と管理費に分け、それぞれを人件費とその他経費に分けて表示するよう定めています(本文第14項、注解 注4)。

  • 事業費:NPO 法人が目的とする事業を行うために直接要する人件費とその他経費
  • 管理費:各種の事業を管理するための費用。総会・理事会の開催運営費、管理部門の役職員の人件費、管理部門の事務所の賃借料・光熱費など

1人の職員が事業と事務局の両方をしている場合や、事務所の家賃を事業と管理で共有している場合は、従事割合や面積などの合理的な基準で按分します。按分の基準を決めたら毎年同じ基準を使うことが、NPO 法第27条第4号の継続性にかなう処理です。

認定NPO法人を目指す場合、実績判定期間の事業費の総額のうち特定非営利活動に係る事業費が80%以上であることが基準の1つになります(NPO 法第45条第1項第4号ロ)。事業費と管理費の分け方は、ここにも影響します。認定の基準は認定NPO法人の要件と申請で整理しています。

収益を計上するタイミング

NPO に特有の収益は、計上の時期にルールがあります。

収益計上の時期(基準)注意点
受取会費確実に入金されることが明らかな場合を除き、実際に入金したとき(本文第12項)翌期以後の分の前受額は前受会費として負債に計上(注解 注1)
受取寄付金確実に入金されることが明らかになったとき(本文第13項)使途が指定された寄付は、使途ごとに受入額・減少額・期末残高を注記(本文第27項)
事業収益販売やサービスの提供をしたとき(本文第17項)売れ残った棚卸資産は流動資産に計上(本文第18項)
返還義務のある助成金・補助金の未使用額当期の収益にせず、前受助成金等として処理(本文第28項)実施期間の途中で決算日を迎えた場合
後払いの助成金・補助金当期に計上した費用に対応する額を未収助成金等として計上(本文第29項)精算払いの助成金など

対象事業と実施期間が決まっている助成金・補助金は、使途等が制約された寄付金等に当たるため、助成金ごとに受入金額・減少額・期末残高を注記します(本文第30項)。助成金の多い団体ほど、決算の前に「未使用額に返還義務があるか」を交付要綱で確かめておく必要があります。

使途が制約された寄付等の重要性が高い場合は、貸借対照表の正味財産の部を指定正味財産と一般正味財産に分け、活動計算書も一般正味財産増減の部と指定正味財産増減の部に分けます。制約が解除されたら、その額を指定正味財産から一般正味財産に振り替えます(注解 注6)。

ボランティア・現物寄付・無償の施設提供

基準は、NPO に特有の取引の扱いを定めています。

取引基準の扱い
現物寄付受贈で取得した資産の取得価額は、取得時の公正な評価額(本文第24項)
無償・低額での施設の提供など金額を合理的に算定できる場合は注記できる。外部資料などで客観的に把握できる場合は、活動計算書にも計上できる(本文第25項)
ボランティアによる役務の提供活動の原価の算定に必要なもので、金額を合理的に算定できる場合は注記できる。客観的に把握できる場合は活動計算書にも計上できる(本文第26項)

ボランティアや無償の施設提供は「できる」規定で、義務ではありません。ただ、ボランティアに大きく支えられている団体は、注記で受け入れたボランティアの明細と計算方法を示すと、決算書の数字だけでは見えない活動の規模を伝えられます(本文第31項(5))。

小さな団体のための簡便な方法

基準は「重要性の乏しいもの」について簡便な方法を認めています(本文第7項)。本文で明記されているものは次のとおりです。

  • 消耗品の購入など少額のものは、実際に支払ったときに費用にできる(第15項)
  • 電話代・電気代・家賃など定期的に支払う費用は、実際に支払ったときに費用にできる(第16項)

一方、複式簿記・発生主義が基準の考え方です。現金出納帳だけで管理している団体は、まず期末に未払金・未収金・前受金を拾い出すところから始めると、活動計算書と貸借対照表を作れるようになります。

決算書を読むときの着眼点

理事や監事が決算書を受け取ったとき、次の順で見ると団体の状況がつかめます。

  1. 経常収益の内訳:会費・寄付金・助成金等・事業収益のどれが大きいか。1つの助成金や1つの委託元に偏っていないか。内閣府の2023年度調査でも、法人が抱える課題の上位に「収入源の多様化」が入っています。
  2. 当期経常増減額:ふだんの活動で正味財産が増えたか減ったか。赤字が続いていれば、何年で正味財産がなくなるかを計算します。
  3. 事業費と管理費の割合:管理費が極端に少ない場合、按分をしていない可能性もあります。
  4. 貸借対照表の流動資産と流動負債:前受会費・前受助成金などの負債を差し引いて、実際に使える資金がどれだけあるか。
  5. 注記:使途が制約された寄付・助成金の残高、借入金の増減、役員とその近親者との取引。
  6. 前年との比較:同じ基準で作っていれば、科目ごとの増減で変化が読めます。

監事が確かめるチェックリスト

  • 貸借対照表の正味財産と、活動計算書の次期繰越正味財産額が一致している
  • 貸借対照表と財産目録の金額が一致している
  • 前受会費・前受助成金など、翌期以後の分を当期の収益にしていない
  • 事業費と管理費の按分の基準が前年と同じ(変えた場合は注記がある)
  • その他の事業がある場合、活動計算書で区分している(本文第23項)
  • 使途が制約された寄付・助成金の残高を注記している
  • 役員とその近親者との取引があれば注記している

まとめ

  • NPO法人会計基準は2010年に民間で策定された統一ルール(最終改正2017年12月12日)。採用は任意だが、内閣府の調査では多数の法人が採用している
  • 活動計算書は経常収益・経常費用・経常外収益・経常外費用の4区分。費用は事業費と管理費に分け、さらに人件費とその他経費に分ける
  • 会費は原則として入金時、寄付は入金が確実になった時点で計上。返還義務のある助成金の未使用額は前受助成金等にする
  • ボランティア・無償の施設提供は注記できる(客観的に把握できれば活動計算書にも計上できる)
  • 決算書は、収益の内訳・当期経常増減額・事業費と管理費・注記の順に読む

参考資料