NPO 法人の事務局の業務を整理するときは、「法律で期限が決まっている業務」「毎回同じ手順で回る定型業務」「判断が要る業務」の3つに分けることから始めます。法定業務は年間カレンダーに、定型業務は手順書と共有の置き場に、判断が要る業務は理事会の役割に戻す。これだけで、事務局の担当者が1人で抱えている仕事の量と、その人がいなくなったときに止まる仕事がはっきりします。
抱え込みが起きやすいのは、NPO 法人の事務局の人数が構造的に少ないからです。内閣府の「2023年度(令和5年度)特定非営利活動法人に関する実態調査」では、役員以外の職員数は次のとおりでした。
| 役員以外の職員(中央値) | 認証法人 | 認定・特例認定法人 |
|---|---|---|
| 職員 | 4.0人 | 5.5人 |
| うち有給職員 | 2.0人 | 5.0人 |
| うち常勤の有給職員 | 1.0人 | 2.0人 |
常勤の有給職員は、認証法人の中央値で1人です。同じ調査で「抱える課題」(3つまでの複数回答)を尋ねると、認証法人では「人材の確保や教育」65.6%、「後継者の不足」44.5%が上位でした。事務局を1人で回し、その人の後が続かないという状況は、多くの法人に共通する前提として設計したほうが現実的です。
法律で期限が決まっている業務
まず、特定非営利活動促進法(以下「NPO 法」)などで期限や頻度が決まっている業務を一覧にします。ここは担当者の判断で省けないため、最初に年間カレンダーへ載せる対象です。
| 業務 | 期限・頻度 | 根拠 |
|---|---|---|
| 通常社員総会の開催 | 少なくとも毎年1回 | NPO 法第14条の2 |
| 総会の招集通知 | 総会の日の少なくとも5日前に、目的である事項を示して、定款で定めた方法で | 第14条の4 |
| 事業報告書等の作成と事務所への備置き | 毎事業年度初めの3か月以内 | 第28条第1項 |
| 事業報告書等の所轄庁への提出 | 毎事業年度1回(細部は所轄庁の条例) | 第29条 |
| 役員名簿・定款等の事務所への備置き | 常時 | 第28条第2項 |
| 社員・利害関係人からの閲覧請求への対応 | 請求があったとき(正当な理由がある場合を除き閲覧させる) | 第28条第3項 |
| 貸借対照表の公告 | 貸借対照表の作成後遅滞なく、定款で定める方法で | 第28条の2 |
| 役員の変更等の届出 | 役員の氏名・住所等に変更があったとき、遅滞なく | 第23条 |
| 役員の改選 | 任期は2年以内で定款で定める期間 | 第24条 |
| 代表権を有する者などの変更登記 | 登記事項に変更が生じてから2週間以内 | 組合等登記令第3条 |
| 収益事業開始等届出書 | 収益事業を開始した日から2か月以内 | 国税庁 手続案内 C1-6 |
| 法人税の確定申告(収益事業がある場合) | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 | 法人税法第74条 |
| 損益計算書等の提出(収益事業がなく、年間収入8,000万円超の場合) | 原則として事業年度終了の日の翌日から4か月以内 | 国税庁 手続案内 C1-65 |
事業報告書等の中身と作る順番は「NPO法人の事業報告書」、設立直後に必要な届出は「NPO法人の設立の流れ」で解説しています。
3月末決算の法人に当てはめた年間カレンダー
上の表を、事業年度が4月1日〜3月31日の法人に当てはめると次のようになります。期限は法令から機械的に計算したもので、総会の時期や提出期限の細部は定款と所轄庁の条例で確かめてください。
| 時期 | 業務 |
|---|---|
| 3月31日 | 事業年度の終了。決算の締め |
| 4月〜5月 | 計算書類・財産目録の作成、監事の監査、総会資料の準備 |
| 総会の5日前まで | 招集通知(目的である事項を示す) |
| 5月〜6月 | 通常社員総会(定款で総会の議決事項としている事業報告・決算など。役員を総会で選任する定款なら、改選の年は選任) |
| 5月31日 | 収益事業がある場合、法人税の確定申告の期限 |
| 6月30日 | 事業報告書等の作成・備置きの期限(事業年度初めの3か月以内) |
| 所轄庁の定める期限 | 事業報告書等の提出 |
| 貸借対照表の作成後遅滞なく | 貸借対照表の公告 |
| 7月31日 | 収益事業がなく年間収入8,000万円超の場合、損益計算書等の提出期限 |
| 役員が変わったとき | 所轄庁への届出(遅滞なく)、理事の変更登記(2週間以内) |
役員の任期が2年なら、改選は2年に1度の総会で行うことになります。改選の年だけ発生する業務(就任承諾書の回収、所轄庁への届出、登記)を、カレンダーに「改選年」として別行で書いておくと抜けません。
抱え込みを減らす5つの手順
手順1 業務をすべて書き出す
事務局の担当者が1か月・1年の間に行っている業務を、大小を問わず書き出します。書き出す項目は次の6つです。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 業務名 | 会費の入金確認 |
| 頻度 | 毎月 |
| 期限 | 月末 |
| 根拠 | 定款・総会決議・法律・助成元の契約など |
| いまの担当 | 事務局長 |
| 手順や資料の置き場 | 担当者のパソコンの中、など |
「いまの担当」と「置き場」の列が同じ1人の名前と個人の端末で埋まった業務が、抱え込みの中心です。
手順2 3つに分ける
| 区分 | 特徴 | 行き先 |
|---|---|---|
| 法定業務 | 期限と根拠が法令にある | 年間カレンダー |
| 定型業務 | 毎回同じ手順で回る(会費の入金確認、名簿の更新、会議室の予約、郵送物の発送など) | 手順書と共有の置き場。ほかの人やボランティアにも渡せる |
| 判断が要る業務 | 事業の方針、予算の配分、人の採用、外部との契約など | 理事会。事務局は材料をそろえる役に回る |
NPO 法第17条は、法人の業務は定款に特別の定めがない限り理事の過半数で決めると定めています。判断が要る業務まで事務局が決めている状態は、法律が想定する形とも違います。
手順3 年間カレンダーを作り、共有する
前の節のカレンダーを自団体の事業年度と定款に合わせて作り、理事と監事にも共有します。監事には、理事の業務執行と財産の状況を監査する職務があります(第18条)。決算と監査の時期を早めに共有しておくと、総会直前の詰まりが減ります。
手順4 定型業務に手順書を付ける
手順書は、次の4点がそろっていれば十分です。
- いつ行うか(トリガーと期限)
- 何を使うか(ファイル、口座、システム、書式の置き場)
- どの順番で行うか(画面や書類の順に番号を振る)
- 終わったら誰に何を報告するか
ファイルは個人の端末ではなく、法人として共有できる置き場に移します。内閣府の同じ調査では、事務連絡に電子メールや LINE などを使っている法人は認証法人で69.1%、会計ソフトやアプリを使っている法人は49.9%でした(認定・特例認定法人では90.2%と85.7%)。使うツールは団体の実情に合わせればよく、大事なのは担当者以外も同じ場所を開けることです。
手順5 会議と手続の手間を減らす制度を確かめる
NPO 法には、事務局の手間に直結する規定がいくつかあります。
| 制度 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 書面・代理による表決 | 総会に出席しない社員は、書面または代理人によって表決できる | 第14条の7第2項 |
| 電磁的方法による表決 | 定款で定めれば、書面による表決に代えて電磁的方法で表決できる | 第14条の7第3項 |
| 総会の決議の省略 | 提案に社員全員が書面または電磁的記録で同意したときは、可決の決議があったものとみなされる | 第14条の9 |
| 電子申請 | NPO 法関係手続のオンライン化として、2022年度に電子申請システムが導入された(所轄庁ごとに導入時期は異なる) | 内閣府 実態調査の注記 |
ただし、表決の規定は定款に別段の定めがあればそちらが優先します(第14条の7第4項)。まず自団体の定款を確かめ、必要なら定款の変更を検討します。所轄庁への事業報告書等の提出方法について、同じ調査では「所轄庁は対面・郵送のみで受け付けている」が認証法人で40.3%でした。電子メールや電子申請が使えるかどうかは、所轄庁の案内で確かめます。
個人情報の管理は事務局の業務として明文化する
会員名簿、寄付者の一覧、ボランティアの連絡先は、事務局が日常的に扱う個人情報です。個人情報保護委員会の Q&A(Q1-54)は、NPO 法人のような非営利の団体も、個人情報データベース等を事業の用に供していれば個人情報取扱事業者に当たるとしています。事務局の業務として、次を手順書に入れておきます。
| 義務 | 内容 | 個人情報保護法 |
|---|---|---|
| 安全管理措置 | 漏えい・滅失・毀損を防ぐ必要かつ適切な措置 | 第23条 |
| 従業者の監督 | 個人データを扱う職員などへの必要かつ適切な監督 | 第24条 |
| 委託先の監督 | 発送代行やシステム会社など、取扱いを委託した先の監督 | 第25条 |
| 漏えい等の報告 | 規則で定める事態が生じたときは、個人情報保護委員会への報告と本人への通知 | 第26条 |
名簿のファイルを担当者の私物の端末やメールに置いたままにしないことは、抱え込みの解消と安全管理の両方に効きます。ホームページで公表しておく事項は「NPOのホームページに載せるべき情報」で整理しています。
抱え込みのサインを確かめるチェックリスト
- 事務局の業務一覧があり、担当と置き場が書いてある
- 法定業務の年間カレンダーがあり、理事と監事に共有している
- 役員改選の年に発生する業務(届出・登記)がカレンダーに載っている
- 会費・寄付の入金確認や名簿の更新に手順書がある
- 業務のファイルが個人の端末ではなく、法人の共有の置き場にある
- 担当者が2週間不在でも、法定の期限に間に合う段取りになっている
- 判断が要る事項は、理事会の議題として上がっている
- 会員名簿や寄付者情報の安全管理と、委託先の監督を手順書に書いている
- 総会の表決の方法(書面・電磁的方法)を定款で確かめた
まとめ
NPO 法人の事務局は、常勤の有給職員が中央値で1人という体制で、法律で期限が決まった業務と日々の定型業務、そして判断まで抱えがちです。業務を法定・定型・判断の3つに分け、法定業務は年間カレンダーに、定型業務は手順書と共有の置き場に、判断は理事会に戻す。この順で整理すると、担当者が替わっても止まらない事務局に近づきます。会計の仕組みを整える場合は「NPO法人会計基準の基本」もあわせて参照してください。
参考資料
- 特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第14条の2〜第14条の9・第17条・第18条・第23条・第24条・第28条〜第29条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000007
- 組合等登記令(昭和三十九年政令第二十九号)第3条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339CO0000000029
- 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第74条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第23条〜第26条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057
- 個人情報保護委員会 Q&A Q1-54: https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q1-54/
- 内閣府「2023年度(令和5年度)特定非営利活動法人に関する実態調査 報告書」(令和6年3月): https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/R5_houjin_report.pdf
- 内閣府「特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き」(令和3年6月): https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/202106_manual_all.pdf
- 国税庁「C1-6 公益法人等又は人格のない社団等の収益事業開始等の届出」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_4.htm
- 国税庁「C1-65 公益法人等の損益計算書等の提出」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/23500061.htm