NPO 法人(特定非営利活動法人)は、所轄庁の「認証」を受けたうえで、法務局で「登記」をした時点で成立します。株式会社や一般社団法人のように登記だけでは設立できず、行政のチェックと市民への公開(縦覧)が間に入るのが特徴です。

流れを一言でまとめると、次のとおりです。

  1. 所轄庁に設立認証の申請書と添付書類を出す
  2. 定款などが受理の日から 2週間 縦覧される
  3. 縦覧期間の経過後 2か月以内 に認証・不認証が決まり、書面で通知される
  4. 認証の通知から 2週間以内 に設立の登記をする(ここで法人が成立)
  5. 登記の後、遅滞なく 登記事項証明書と財産目録 を添えて所轄庁に届け出る

内閣府の「認証・認定数の遷移」によると、2026年7月末時点の認証法人数は48,813法人です。この記事では、特定非営利活動促進法(以下「NPO 法」)と組合等登記令、内閣府の「特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き」(令和3年6月)にもとづいて、申請の前に準備することから設立直後の届出までを順に整理します。

設立できる団体の条件を先に確かめる

申請書を作り始める前に、団体が認証の基準を満たすかどうかを確かめます。NPO 法第12条は、次の基準に適合すると認めるときは所轄庁は設立を認証しなければならない、と定めています。

確かめること基準根拠
活動の分野別表の20分野のいずれかに当たり、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする第2条第1項・別表
営利を目的としない社員の資格の得喪に不当な条件を付けない第2条第2項第1号
役員報酬報酬を受ける役員が役員総数の3分の1以下第2条第2項第1号
宗教・政治宗教の教義を広めることや、政治上の主義の推進を主たる目的としない。特定の公職の候補者や政党を推薦・支持・反対することを目的としない第2条第2項第2号
暴力団との関係暴力団や、その統制の下にある団体でない第12条第1項第3号
社員の数10人以上第12条第1項第4号
役員の数理事3人以上・監事1人以上第15条
手続と書類設立の手続、申請書と定款の内容が法令に適合している第12条第1項第1号

別表の20分野は、保健・医療・福祉、社会教育、まちづくり、観光、農山漁村・中山間地域、学術・文化・芸術・スポーツ、環境の保全、災害救援、地域安全、人権・平和、国際協力、男女共同参画、子どもの健全育成、情報化社会、科学技術、経済活動の活性化、職業能力の開発・雇用機会の拡充、消費者の保護、これらの団体の運営・活動への連絡・助言・援助、そして都道府県・指定都市の条例で定める活動です。

役員を決めるときの注意

役員には、なれない人と、組み合わせの制限があります。

  • 欠格事由(第20条):破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、拘禁刑以上の刑の執行を終えてから2年を経過しない者、暴力団の構成員等など
  • 親族の制限(第21条):それぞれの役員について、配偶者または3親等以内の親族が1人を超えて含まれてはならず、役員本人とその配偶者・3親等以内の親族が役員総数の3分の1を超えてはならない
  • 監事の兼職禁止(第19条):監事は理事や職員を兼ねられない

家族や親しい仲間だけで役員を固めると、第21条にかかることがあります。役員候補が決まったら、親族関係を一覧にして確かめておくと手戻りが減ります。

所轄庁を確かめる

所轄庁は、主たる事務所がある都道府県の知事です。ただし、事務所が1つの指定都市の区域内だけにある場合は、その指定都市の長が所轄庁になります(第9条)。

申請書の様式、添付書類の細部(住所を証する書面として何を認めるか、軽微な補正の範囲など)は、所轄庁の条例で定めると法律に書かれています。まずは所轄庁のウェブサイトで手引きと様式を入手し、所轄庁の窓口に相談しながら進めるのが確実です。

申請に添える10種類の書類

NPO 法第10条第1項と内閣府の手引きが挙げる添付書類は、次の10種類です。

No.書類中身と注意点
1定款次の節の14項目を記載。設立当初の役員も定款で定める(第11条第2項)
2役員名簿役員の氏名、住所または居所、報酬の有無
3就任承諾及び誓約書の謄本欠格事由に該当しないこと・親族制限に違反しないことの誓約と就任の承諾
4役員の住所または居所を証する書面何を認めるかは所轄庁の条例で定める
5社員のうち10人以上の氏名と住所または居所を記載した書面法人の社員は名称と代表者の氏名
6確認書宗教・政治の目的でないこと、暴力団関係でないことを確認したことを示す書面
7設立趣旨書なぜ法人をつくるのか、これまでの活動と今後
8設立についての意思の決定を証する議事録の謄本設立の意思決定をした会議の議事録
9事業計画書設立当初の事業年度と翌事業年度の2年分
10活動予算書設立当初の事業年度と翌事業年度の2年分の収益と費用の見込み

事業計画書と活動予算書は2年分が必要です。活動予算書の科目は、設立後に毎年作る活動計算書と同じ考え方で組むと、設立後の会計にそのままつながります。活動計算書の構造は「NPO法人会計基準の基本」で解説しています。

定款に書く14項目

定款には、NPO 法第11条第1項により次の事項を必ず書きます。

No.記載事項注意点
1目的何のために、誰のために活動するか
2名称NPO 法人以外は「特定非営利活動法人」の文字を名称に使えない(第4条)
3特定非営利活動の種類と、それに係る事業の種類別表の分野と、実際に行う事業を対応させる
4主たる事務所とその他の事務所の所在地所轄庁が決まる
5社員の資格の得喪に関する事項入会・退会に不当な条件を付けない
6役員に関する事項定数、選任方法、任期(2年以内。第24条)
7会議に関する事項総会・理事会の招集、定足数、議決
8資産に関する事項
9会計に関する事項
10事業年度
11その他の事業を行う場合は、その種類など行わないなら書かない
12解散に関する事項残余財産の帰属先は、他の NPO 法人、国・地方公共団体、公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人から選ぶ(第11条第3項)
13定款の変更に関する事項
14公告の方法貸借対照表の公告の方法もここで決める

設立後に「目的」「活動の種類」「事業の種類」などを変えると、改めて所轄庁の認証が必要になります(第25条第3項)。設立時に活動の範囲をどこまで書くかは、数年先の事業まで見越して決めておくと、設立直後の定款変更を避けられます。貸借対照表の公告は定款で定める方法で行うため(第28条の2)、公告の方法は、「NPO法人の事業報告書」で紹介している内閣府 NPO 法人ポータルサイトへの掲載なども含めて検討します。

申請から成立までの手順

手順1 設立を決める会議を開き、議事録を残す

定款案、役員、事業計画と活動予算を確定させ、設立の意思を決定します。その議事録の謄本が添付書類8になります。

手順2 所轄庁に申請する

申請書と添付書類を所轄庁に提出します。書類に不備があっても、所轄庁の条例で定める軽微なもの(内閣府の手引きでは、内容の同一性に影響しない、客観的に明白な誤記・誤字・脱字などが例に挙がっています)であれば、申請書の受理から1週間以内に限り補正できます(第10条第4項)。

手順3 縦覧(2週間)

所轄庁は、定款、役員名簿(住所・居所の部分を除く)、設立趣旨書、事業計画書、活動予算書を、受理の日から2週間、公衆の縦覧に供します。あわせて、申請があったこと、申請の年月日、これらの書類の記載事項をインターネットなどで公表します(第10条第2項)。縦覧期間は令和2年の法改正で1か月から2週間に短縮され、2021年6月9日から適用されています。

手順4 認証・不認証の決定(縦覧後2か月以内)

所轄庁は、正当な理由がない限り、縦覧期間を経過した日から2か月以内に認証か不認証を決めます。条例でより短い期間を定めている所轄庁では、その期間内です(第12条第2項)。結果は書面で通知され、不認証の場合は理由が示されます(同条第3項)。

手順5 設立の登記(認証通知から2週間以内)

認証の通知があった日から2週間以内に、主たる事務所の所在地を管轄する法務局で設立の登記をします(組合等登記令第2条第1項)。登記事項は、目的及び業務、名称、事務所の所在場所、代表権を有する者の氏名・住所・資格などです。登記の日が法人の成立日になります(NPO 法第13条第1項)。

従たる事務所が主たる事務所と別の登記所の管轄区域にあるときは、設立の登記の日から2週間以内に、従たる事務所の所在地でも登記が必要です(内閣府の手引き。組合等登記令第11条)。

認証があった日から6か月を経過しても登記をしないときは、所轄庁は認証を取り消すことができます(NPO 法第13条第3項)。

手順6 所轄庁に登記完了を届け出る

登記の後、遅滞なく、登記事項証明書と成立の時の財産目録を添えて所轄庁に届け出ます(第13条第2項)。財産目録は事務所に常に備え置く必要があります(第14条)。

期間の目安

区間法令上の期間
申請 → 縦覧の終了受理の日から2週間
縦覧の終了 → 認証・不認証の決定2か月以内(条例で短縮している所轄庁あり)
認証の通知 → 設立の登記2週間以内
登記 → 所轄庁への届出遅滞なく

法令上の最長で見ると、申請から登記までは約3か月です。これに書類づくりと所轄庁との事前のやり取りの期間が加わります。活動開始の日や助成金の申請時期から逆算して、申請日を決めます。

設立後すぐに必要な手続

税務の届出

NPO 法人は、法人税法上は公益法人等とみなされ(NPO 法第70条)、法人税は収益事業から生じた所得にだけかかります。国税庁の手続案内によると、公益法人等が新たに収益事業を開始したときは、開始した日から2か月以内に「収益事業開始等届出書」を所轄の税務署長に出します。

収益事業を行わず法人税の確定申告をしない場合でも、年間の収入金額の合計が8,000万円を超えるときは、原則として事業年度終了の日の翌日から4か月以内に損益計算書または収支計算書を税務署長に提出します(国税庁「C1-65 公益法人等の損益計算書等の提出」)。

自団体の事業が収益事業に当たるかどうかは、設立前の事業計画の段階で一度確かめておきます。

毎年の報告と、役員の変更

設立後は、毎事業年度初めの3か月以内に前事業年度の事業報告書などを作り(第28条)、毎事業年度1回、所轄庁に提出します(第29条)。役員の氏名や住所に変更があれば、所轄庁への届出が必要です(第23条)。詳しくは「NPO法人の事業報告書」で解説しています。

税制上の優遇を受けたい場合

寄付者が税の優遇を受けられる認定 NPO 法人には、設立から日の浅い法人向けの特例認定の制度もあります。要件と申請の順番は「認定NPO法人の要件と申請」にまとめています。

設立準備のチェックリスト

  • 活動が別表の20分野のいずれかに当たり、不特定かつ多数の利益を目的としている
  • 社員を10人以上そろえ、氏名と住所を書面にまとめた
  • 理事3人以上・監事1人以上を決め、報酬を受ける役員は3分の1以下
  • 役員の欠格事由と親族の制限(第20条・第21条)を確かめた
  • 監事が理事や職員を兼ねていない
  • 所轄庁(都道府県か指定都市か)を確かめ、手引きと様式を入手した
  • 定款の14項目を書き、残余財産の帰属先を法律の範囲から選んだ
  • 事業計画書と活動予算書を2年分作った
  • 設立の意思を決めた会議の議事録を作った
  • 認証の通知から2週間以内に登記できるよう、法務局への申請書類を準備した
  • 登記後の所轄庁への届出(登記事項証明書と財産目録)を段取りした
  • 収益事業を行う予定がある場合、開始から2か月以内の届出を段取りした

まとめ

NPO 法人の設立は、所轄庁の認証(書類審査と縦覧)→ 法務局での登記 → 所轄庁への届出の3段階です。期間は法令で決まっている部分が多く、申請から登記まで最長で約3か月を見込みます。つまずきやすいのは、社員10人と役員の要件、役員の親族制限、そして認証後2週間以内の登記です。所轄庁ごとに様式や添付書類の細部が違うため、所轄庁の手引きを手元に置き、窓口に相談しながら準備を進めてください。

参考資料