寄付・参加・協働の問い合わせを取りこぼさないために必要なのは、返事の文章のうまさより、届いた問い合わせを1か所に集めて期限を切る仕組みです。入口を1つの受付簿にまとめ、1件1行で記録し、担当と返す期限を決め、月に1回返していない行がないかを確かめます。返す期限の日数に決まった基準はないので、団体が自分で決めて案内に書いておきます。問い合わせで受け取る名前や連絡先は個人情報なので、利用目的の示し方もあわせて整えます。

問い合わせが取りこぼされる構造

取りこぼしは、担当者の不注意より、入口と記録の仕組みから起きます。

  • 入口が多い:電話、メール、ホームページのフォーム、SNSのメッセージ、ポータルサイトの窓口と、入口ごとに見る人が違う
  • 担当が決まっていない:「誰かが返すだろう」と全員が思い、誰も返さない
  • 記録がない:受信箱が記録の代わりになり、返したかどうかは送った人しか知らない
  • 期限がない:「確認して折り返します」と返したまま、次の連絡の日が決まっていない

寄付の問い合わせは、受け入れの準備ができていない団体ほど返しにくくなります。内閣府「2023年度(令和5年度)特定非営利活動法人に関する実態調査」(図表46)では、寄付への取り組みについて「特に取り組んでいることはない」と答えた認証法人は69.2%でした。一方、認定・特例認定法人では「寄付の受け入れ状況の資料の作成・公表」が52.6%でした。返す材料を先に用意しておくと、問い合わせへの返事も早くなります。

問い合わせの種類と用意しておく材料

種類ごとに、返すときに使う材料と注意点を決めておきます。

種類よくある中身用意しておく材料注意点
寄付寄付の方法、使い道、領収書受け付けの方法、使い道、報告の方法認定を受けていなければ控除の対象と案内しない
参加・ボランティア活動日、条件、持ち物募集の案内、受け入れの流れ名前・連絡先の利用目的を示す
協働行政・企業・他団体からの連携や共催の相談団体の概要、直近の事業報告書約束できる人(代表や理事)へ回す
取材活動の取材、コメントの依頼団体の概要、プレスリリース答える人と確認の流れを決めておく
苦情・相談活動や個人情報の扱いへの苦情対応の責任者記録を残し、責任者が返す

寄附金控除の対象になるのは、認定NPO法人・特例認定NPO法人への寄付など、所得税法で定められた特定寄附金です(国税庁 タックスアンサー No.1150)。認定を受けていない法人は、控除の対象になると案内しないでください。寄付の受け付けと報告の仕組みはNPOの寄付の集め方、ボランティアの受け入れの流れはボランティアの募集と受け入れで解説しています。取材の問い合わせに備えた資料はプレスリリースの書き方が参考になります。

取りこぼさない5つの手順

手順1 入口を書き出し、1つの受付簿に集める

入口ごとに「誰が見ているか」を書き出し、どの入口から来た問い合わせも同じ受付簿に1行で記録するようにします。電話は受けた人が記録し、メールやフォームは見た人が記録します。

手順2 1件1行で記録する

受付簿には次の項目を置きます。

  • 受付日と入口(電話・メール・フォーム・SNS・ポータル)
  • 種類(寄付・参加・協働・取材・苦情・その他)
  • 内容の要約
  • 担当
  • 返す期限
  • 返した日と結果

相手の名前や連絡先は受付簿に書くか、元のメールやフォームを参照する形にします。受付簿は名簿と同じく、見られる人を絞ります。

手順3 返す期限を決める

「受け付けたことの返事」と「中身の返事」を分けて期限を決めると、調べるのに時間がかかる問い合わせでも相手を待たせずに済みます。期限の日数は、事務局の人数と活動日から団体が決めます。決めた日数はフォームの完了画面や問い合わせの案内に書いておくと、相手も待つ目安が持てます。

最初の返事には、次の4つを入れると相手が次の動きを待てます。

  • 問い合わせを受け付けたこと
  • 担当する人の名前(個人の連絡先ではなく、団体の窓口を返信先にする)
  • 中身の返事をいつまでに送るか
  • 急ぎのときの連絡先(団体の代表電話など)

寄付の問い合わせなら、受け付けの方法と使い道の報告の時期を、参加の問い合わせなら次の活動日と申し込みの方法を、最初の返事の段階で添えられるように、よく使う文面を種類ごとに用意しておきます。文面は受付簿と同じ置き場に置き、誰が返しても同じ内容になるようにします。

手順4 担当と代わりの人を決める

種類ごとに担当を決め、担当が不在のときに代わりに返す人も決めます。協働や取材のように団体として約束を伴うものは、受けた人がその場で答えず、決める権限のある人へ回します。

手順5 月に1回、受付簿を見直す

返していない行が残っていないかを確かめ、種類ごとの件数を見ます。同じ質問が続くなら、ホームページの案内に答えを載せる合図です。ホームページに載せる情報はNPOのホームページに載せるべき情報で解説しています。

問い合わせで受け取る個人情報の扱い

問い合わせで受け取る名前・連絡先・内容は個人情報です。個人情報保護法の次の条文が関係します。

  • 利用目的の明示:フォームやメールで本人から直接書面(電磁的記録を含む)で個人情報を取得するときは、あらかじめ利用目的を明示します(第21条第2項)
  • 目的外の利用:問い合わせへの返事のために受け取った連絡先を、利用目的の範囲を超えて使う場合は、あらかじめ本人の同意が要ります(第18条)。会報や寄付のお願いを送るなら、利用目的にそれを含めて示しておきます
  • 第三者提供:協働先や他団体へ問い合わせをつなぐときは、原則としてあらかじめ本人の同意を得ます(第27条)
  • 要配慮個人情報:病歴などの要配慮個人情報の取得には、原則として本人の同意が要ります(第20条第2項)。相談の窓口では、フォームに何を書いてもらうかを決めておきます
  • 苦情の処理:個人情報の取扱いに関する苦情は、適切かつ迅速な処理に努めます(第40条)

ポータルサイトの団体ページも入口の1つ

団体を探す人は、団体のホームページだけでなくポータルサイトからも問い合わせてきます。FindNPO(findnpo.jp)では、内閣府NPO法人ポータルサイトの公表データをもとに、全国のNPO法人の団体ページがすでに作られています。団体が掲載を申し込んで承認されると、団体ページに問い合わせフォームを出せます。届いた問い合わせの通知メールにはリンクだけが載り、中身は団体の管理画面で見て、対応の段階を管理できます。掲載の申し込みは無料です。フォームを出した場合は、手順1の入口の一覧に加えておきます。

よくある落とし穴

  • 個人のメールアドレスで返す:担当が替わるとやりとりが団体に残りません
  • 「確認して折り返します」で止まる:次に連絡する日を受付簿に書かないと、そのまま忘れられます
  • 控除の可否を推測で答える:認定の有無と寄付した人の事情で変わるため、個人の判断は税務署や税理士へ案内します
  • 協働の相談をその場で約束する:決める権限のある人へ回してから返します

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まとめ

  • 取りこぼしの原因は、入口が多いこと・担当がないこと・記録がないこと・期限がないこと
  • 入口を1つの受付簿に集め、1件1行で記録し、担当と返す期限を決める
  • 返す期限の日数は団体が決め、フォームや案内に書いておく
  • 認定を受けていない法人は、寄付が控除の対象になると案内しない(国税庁 No.1150)
  • 問い合わせで受け取る個人情報は、利用目的の明示(第21条第2項)と第三者提供の同意(第27条)に沿って扱う

参考資料