NPO法人の設立の登記が済んだら、まず所轄庁に登記完了を届け出て、都道府県と市町村に法人設立の届出を出します。そのほかの届出は、収益事業をするか、給与や役員報酬を払うか、人を雇うかで決まります。健康保険・厚生年金保険の新規適用届は5日以内、労働保険の成立届は10日以内と期限の短いものがあるので、自分の団体に当てはまる届出を一覧にして、期限の短い順に進めます。この記事では登記のあとの手続だけを扱い、書類の書き方は窓口の案内に譲ります。

何が要るかは3つの問いで決まる

設立のあとの届出は、団体によって要るものが違います。次の3つの問いに答えると、自分の団体の一覧が作れます。

問い「はい」のときに要る届出
どの法人にも所轄庁への登記完了の届出、都道府県・市町村への法人設立の届出
収益事業をするか税務署への収益事業開始等届出書
給与や役員報酬を払うか税務署への給与支払事務所等の開設届出書、年金事務所への新規適用届
労働者を雇うか労働基準監督署とハローワークへの労働保険・雇用保険の届出

NPO法人は法人税法上は公益法人等とみなされ(NPO法第70条)、法人税は収益事業から生じた所得にかかります。収益事業に当たるかの考え方はNPO法人と法人税の記事で解説しています。

期限の一覧

届出出す先期限根拠・案内
登記完了の届出(登記事項証明書と財産目録)所轄庁登記のあと遅滞なくNPO法第13条第2項
法人設立の届出都道府県税事務所・市町村東京都は設立の日から15日以内。市町村は条例で定める期限東京都主税局
収益事業開始等届出書税務署収益事業を始めた日から2か月以内国税庁 C1-6
給与支払事務所等の開設届出書税務署開設の事実から1か月以内国税庁 A2-7
健康保険・厚生年金保険の新規適用届事務センターまたは年金事務所事実発生から5日以内日本年金機構
被保険者資格取得届事務センターまたは年金事務所5日以内日本年金機構
保険関係成立届労働基準監督署成立の翌日から10日以内厚生労働省
概算保険料申告書労働基準監督署など保険関係の成立から50日以内厚生労働省
雇用保険適用事業所設置届公共職業安定所設置の翌日から10日以内厚生労働省
雇用保険被保険者資格取得届公共職業安定所雇った月の翌月10日まで厚生労働省

届出ごとに確かめること

所轄庁:登記完了の届出と財産目録

設立の登記をしたら、遅滞なく登記事項証明書と財産目録を添えて所轄庁に届け出ます(NPO法第13条第2項)。財産目録は成立の時に作って、事務所に備え置きます(第14条)。申請から登記までの流れはNPO法人の設立の流れで解説しています。

法人番号の通知

設立の登記をした法人には法人番号が指定され、国税庁から法人番号指定通知書が登記上の所在地に届きます。通知書は、年金事務所への新規適用届などで写しを求められるので保管しておきます。

都道府県と市町村:法人設立の届出と均等割

東京都主税局の案内では、NPO法人は設立の日から15日以内に都税事務所へ法人設立・設置届出書を出します。市町村への届出の期限は市町村ごとの条例で決まります。

法人住民税の均等割は、収益事業をしていなくても申告が必要です。東京都では、収益事業を行わないNPO法人が4月30日までに申告書と免除申請書を出せば、都民税の均等割が免除されます。市町村民税の均等割の免除は市町村ごとに扱いが違うため、事務所のある市町村で確かめてください。

税務署:収益事業・給与・消費税

  • 収益事業:国税庁の手続案内は、普通法人などが出す「内国普通法人等の設立の届出」は公益法人等には不要とし、公益法人等が収益事業を始めたときは2か月以内に「収益事業開始等届出書」を出すとしています(C1-4・C1-6)
  • 給与:給与を払う事務所を開いたときは、1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を出します(A2-7)。給与の支給人員が常時10人未満なら、源泉所得税を半年ごとにまとめて納める「納期の特例」の申請ができます(No.2505)
  • 消費税:基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務が免除されます。ただし特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合や、適格請求書発行事業者に登録している場合は免除されません(No.6501)。設立直後の扱いと登録するかどうかは、税務署や税理士に確かめてください

年金事務所:健康保険・厚生年金保険

日本年金機構は、常時従業員を使用する法人の事業所(事業主のみの場合を含む)は加入が義務としています。新規適用届は事実発生から5日以内に、事務センターか年金事務所に電子申請・郵送・窓口で出します。添付書類として、発行から90日以内の登記簿謄本と法人番号指定通知書の写しが案内されています。

「使用される」とは、労務の対償として給与や賃金を受ける使用関係のことです。法人から役員報酬を受ける理事も加入の手続きが要る場合があるため、報酬を払い始める前に年金事務所で確かめてください。

労働基準監督署とハローワーク:労働保険

厚生労働省は、農林水産業の一部を除き、労働者を1人でも使う事業は労働保険の適用事業としています。保険関係成立届は10日以内、概算保険料申告書は50日以内、雇用保険の適用事業所設置届は10日以内、雇った人の資格取得届は翌月10日までです。

最初の事業年度の終わりに向けて

設立の届出が一段落したら、最初の事業年度の終わりを暦に入れます。事業年度は定款で決まっているため、設立の日によっては最初の事業年度が1年より短くなります。その場合も、事業年度の初めの3か月以内に前の事業年度の事業報告書等を作って事務所に備え置き(NPO法第28条)、所轄庁に提出します(第29条)。貸借対照表の公告も、定款で定めた方法で行います(第28条の2)。

最初の決算で慌てないためには、設立の日から会計を始め、活動計算書の形で記録しておくことです。活動計算書の読み方と作り方はNPO法人会計基準の基本で解説しています。

設立のあとのチェックリスト

  • 所轄庁に登記完了を届け出た。財産目録を事務所に備え置いた
  • 法人番号指定通知書を受け取り、保管した
  • 都道府県と市町村に法人設立の届出を出し、均等割の扱いを確かめた
  • 収益事業に当たる事業があるかを確かめた
  • 給与や役員報酬を払うなら、給与支払事務所等の開設届出書を出し、納期の特例を申請するか決めた
  • 報酬を払う人がいるなら、社会保険の加入を年金事務所で確かめた
  • 労働者を雇うなら、労働保険と雇用保険の届出を出した
  • 最初の事業年度の終わりから数えて、事業報告書等の期限を暦に入れた

よくある落とし穴

  • 登記で終わったと思う:登記完了の届出と法人設立の届出は、どの法人にも要ります
  • 収益事業がないから税務署は関係ないと思う:給与を払えば給与支払事務所等の開設届出書が要ります
  • 役員報酬だけなら社会保険は関係ないと思う:報酬を受ける理事が加入の対象になる場合があります
  • 均等割を収益事業の有無で判断する:収益事業がなくても申告は必要です。免除の扱いは都道府県と市町村で確かめます

毎年の事業報告書等の作り方はNPO法人の事業報告書、税制上の優遇を受ける仕組みは認定NPO法人の要件と申請で解説しています。設立に関する記事は設立と法人格の選び方の一覧から探せます。

まとめ

  • どの法人にも要るのは、所轄庁への登記完了の届出と、都道府県・市町村への法人設立の届出
  • 収益事業・給与や役員報酬・労働者の雇用の3つの問いで、ほかの届出が決まる
  • 期限の短いものから進める(社会保険5日、労働保険10日、東京都の設立届15日、給与支払事務所等1か月、収益事業2か月)
  • 均等割は収益事業がなくても申告が必要。免除の扱いは都道府県と市町村で確かめる
  • 書類の書き方と個別の判断は、窓口か専門家に確かめる

参考資料