NPO のプレスリリースは、団体の活動を第三者である記者を通じて、無料で発信できる手段です。ただし記者は日々大量のリリースを受け取っており、団体の思いの強さだけでは読まれません。結論としては、ニュースになる切り口を明確にした構成で、活動分野に近い届け先を選んで送ることが、取り上げてもらえるかどうかを分けます。

この記事では、ニュースになりやすい切り口の見分け方、タイトルと本文の構成、届け先と送るタイミング、取材を受けたあとの著作権の注意点を整理します。

なぜ書き方と届け先が結果を左右するのか

記者は、多くの団体・企業から届くリリースの中から、限られた時間で記事にするものを選びます。選ばれるのは、団体にとって重要な情報ではなく、読者・視聴者にとってニュース価値がある情報です。

ニュース価値を判断する切り口には、次のようなものがあります。

切り口NPOの活動での例
社会的な意義・課題とのつながり少子高齢化、貧困、災害復興などの社会課題に、その活動がどう応えているか
数字による裏付け支援した件数・参加者数、前年からの増減
季節性・時流季節の行事、社会的な話題(法改正、災害など)と絡めた企画
初出性地域で初めての取組み、新しい事業の開始
地域性特定の地域に密着した活動、自治体との連携
意外性・対比一般的なイメージとの違い、当事者の視点

団体の活動を、まずこの切り口のどれに当てはまるかで整理すると、タイトルと構成が決めやすくなります。

判断材料:ニュースになりやすい切り口を選ぶ

複数の活動やお知らせがある場合は、次の観点でどれを先にリリースするかを判断します。

  • 数字や具体的な成果で裏付けられるか(「たくさんの方に」ではなく「◯人が参加した」)
  • 写真や映像で伝わる場面があるか(取材に来た記者が撮影できる絵があるか)
  • 地域のメディアが関心を持つ切り口(自治体・学校・商店街など地域の他の主体と関わりがあるか)
  • タイミングが合っているか(イベントの告知は開催前、成果報告は活動の節目に)

打ち手:構成と書き方

タイトルとリード文

タイトルは、「誰が・何をしたか(する予定か)」を一行で示します。「〜についてのお知らせ」のような曖昧な言い方より、具体的な内容が伝わる言い方にします。

リード文(本文の最初の数行)には、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を先に書きます。記者はここだけを読んで続きを読むかどうかを決めるため、結論を先に置きます。

本文の構成

タイトル
リード文(5W1H)
背景・経緯(なぜ今この活動をするのか)
具体的な内容(日時・場所・内容・実績の数字)
今後の予定、記者への呼びかけ(取材の受け入れ可否など)
団体概要(設立年・活動内容・所在地・代表者・連絡先)

団体概要には、記者が日中に問い合わせられる電話番号かメールアドレスを必ず入れます。取材の申し込みや事実確認の連絡が取れないと、記事化を見送られることがあります。

写真を添える

活動の様子が伝わる写真を1〜2枚添えると、掲載の可能性が上がります。写真に写っている人からは、あらかじめ掲載の同意を得ておく必要があります。同意の取り方は「活動の写真をSNS・HPに載せるときの肖像権と同意の取り方」で整理しています。

配布先

届け先特徴
記者クラブ(都道府県庁・市区町村・各業界)資料の投げ込み(配布)は比較的取り組みやすい。クラブの窓口や運用は自治体・団体ごとに異なるため、事前に問い合わせて確認する
専門紙・業界紙福祉・地域振興など、活動分野に近いメディアの記者は関心を持ちやすい
地方紙・地域のコミュニティFM・ケーブルテレビ地域に密着した活動は、全国メディアより取り上げてもらいやすい
過去に取材してくれた記者への直接送付一度関係ができた記者には、メールで直接送ると読んでもらいやすい
プレスリリース配信サービス・自団体のSNS配布と同時に、自団体のSNSやホームページでも公開しておくと、記者が事前に内容を確認できる

送るタイミング

  • イベントの告知は、開催の1〜2週間前を目安に送ると、事前の準備記事の材料になります。
  • 当日の速報用に、開催後すぐ使える写真とコメントを別に用意しておくと、当日または翌日の記事化につながりやすくなります。
  • 調査結果や制度の開始など、発表日を決めているものは、解禁日時(いつから報道してよいか)をリリースに明記します。

実行時の落とし穴:取材を受けたあとの著作権

取材を受けて記事が掲載されたら、団体のホームページやSNSで紹介したくなりますが、新聞記事や放送のニュース記事、報道写真は著作物として保護されています。日本新聞協会の見解でも、報道写真について「いかなる報道写真も自由利用が認められない」とされており、記事の大半をそのまま使うような転載には、許諾と使用料の支払いが必要になります。

ホームページで紹介するときは、次のようにします。

  • 見出しと数行の要約、記事へのリンクにとどめる(全文の転載はしない)
  • 文章の一部を引用する場合も、著作権法第32条が定める「公正な慣行に合致し、報道・批評・研究その他の引用の目的上正当な範囲内」であることが必要(出典(媒体名・掲載日)を明記する)
  • 記事全文や写真を使いたい場合は、掲載元の報道機関に転載の許諾を得る

「取材してもらえた記事だから自由に使ってよい」わけではない点に注意してください。

公開前のチェックリスト

  • タイトルと最初の数行で、誰が・何を・いつ・どこでが伝わる
  • 数字や具体的な事実で、ニュース性の裏付けがある
  • 記者が問い合わせられる連絡先(日中つながるもの)を入れた
  • 写真を添える場合、写っている人の掲載同意を得ている
  • 活動分野に近い届け先を選んだ
  • イベントは開催前、発表ものは解禁日時を明記して送った
  • 掲載後の記事は全文転載せず、要約とリンクで紹介する方針を決めている

まとめ

  • プレスリリースが読まれるかは、団体の熱意ではなく、社会的意義・数字・季節性・地域性などのニュース性で決まる
  • タイトルとリード文に5W1Hをまとめ、団体概要と連絡先を必ず入れる
  • 記者クラブ・専門紙・地域メディア・過去に取材した記者など、活動分野に近い届け先を選ぶ
  • 掲載された記事は著作物。全文転載はせず、要約とリンクで紹介し、引用は著作権法第32条の範囲内にとどめる

参考資料