NPO の活動報告は、法律で作る事業報告書と計算書類を材料にして、寄付者・会員・助成団体など読み手ごとに書き直したものです。一から作るものではありません。事業報告書等は所轄庁に出すための書類で、読み手が団体の外の人一般であるのに対して、活動報告は「あなたの寄付・会費で、この1年に何ができたか」を支えてくれた人に伝えるためのものです。
内閣府の「2023年度(令和5年度)特定非営利活動法人に関する実態調査」では、寄付へのお礼として「お礼状や活動報告、無料の会報などを渡している」と答えた法人は、認定・特例認定法人で87.4%でした。一方、認証法人(認定を受けていない NPO 法人)では37.9%にとどまり、58.2%が「特に何もしていない」と答えています。寄付への取組みでも、「寄附の受入状況とその活用などに関する資料の作成・公表」をしている法人は、認定・特例認定法人で52.6%、認証法人で9.5%でした。
この記事では、特定非営利活動促進法(以下「NPO 法」)と NPO 法人会計基準にもとづいて、活動報告の材料、載せる項目と構成、作る順番、届け方を整理します。
事業報告書と活動報告の違い
最初に、法律で決まっている書類と、団体が任意で作る活動報告を分けておきます。
| 事業報告書等 | 活動報告 | |
|---|---|---|
| 根拠 | NPO 法第28条・第29条(義務) | なし(任意) |
| 作る時期 | 毎事業年度初めの3か月以内 | 団体が決める。事業報告書等の後が作りやすい |
| 提出・公開 | 毎事業年度1回、所轄庁に提出。所轄庁で閲覧・謄写できる(個人の住所の部分を除く。第30条) | 寄付者・会員に送る、ホームページに載せるなど団体が決める |
| 様式 | 所轄庁の条例・手引きで決まる | 自由 |
| 読み手 | 所轄庁、利害関係人、団体を調べたい人 | 寄付者、会員、ボランティア、助成団体、利用者の家族など |
| 中身 | 事業の種類ごとの実施内容、活動計算書・貸借対照表、財産目録、年間役員名簿、社員10人以上の名簿 | 事業報告書等から読み手に関係する部分を選び、数字と写真で伝える |
事業報告書等の5つの書類と作り方は「NPO法人の事業報告書」で解説しています。活動報告は、この書類がそろってから作ると、数字が事業報告書と食い違わないという利点があります。所轄庁で誰でも閲覧できる書類と、寄付者に送った報告の数字が違うと、それだけで信頼を損ないます。
最初に確かめること:読み手と材料
読み手を決める
活動報告を1種類で済ませるか、読み手ごとに分けるかは、団体の規模と手間で決めます。読み手によって知りたいことが違うので、少なくとも誰に向けた部分かを意識して書きます。
| 読み手 | 知りたいこと | 載せるもの |
|---|---|---|
| 寄付者 | 寄付が何に使われ、何ができたか | 寄付の受入額と使い道、使途を指定した寄付の残高、寄付でできたことの数字 |
| 会員(正会員・賛助会員) | 1年間の事業と、団体の運営がうまくいっているか | 事業ごとの実績、収入と支出の全体、来年度の計画 |
| ボランティア | 自分の参加が何につながったか | 活動の回数・参加人数、活動の様子、次の募集 |
| 助成団体・行政 | 事業の成果と、団体の運営の確かさ | 事業ごとの実績と成果、会計の情報、役員の体制 |
NPO 法は、理事は少なくとも毎年1回、通常社員総会を開かなければならないと定めています(第14条の2)。定款で事業報告や決算を総会で扱うことにしている団体は、総会の資料と活動報告の中身をそろえておくと、同じ数字を二度作らずに済みます。
材料をそろえる
| 材料 | どこにあるか | 活動報告での使い方 |
|---|---|---|
| 事業報告書 | 事業報告書等 | 事業ごとの実施内容・回数・対象者。そのまま写さず、読み手に関係する事業を選ぶ |
| 活動計算書 | 計算書類 | 収入の内訳(会費・寄付・助成金・事業収益など)と支出の全体 |
| 事業費の内訳(注記) | 計算書類の注記 | 事業ごとにいくら使ったか |
| 使途等が制約された寄付等の内訳(注記) | 計算書類の注記 | 使途を指定された寄付の受入額・使った額・残高 |
| ボランティアによる役務の提供(注記) | 計算書類の注記(記載している場合) | ボランティアの参加の規模 |
| 活動の記録・写真 | 事務局の記録 | 数字の裏付けと、活動の様子 |
会計基準の注記は、そのまま報告の材料になる
NPO 法人会計基準は、寄付者の意思で使途に制約が課されている寄付を受けたときは、その事業年度の収益として計上するとともに、使途ごとに受入金額、減少額及び事業年度末の残高を注記すると定めています(本文27)。「〇〇のために」と寄付を募った場合、この注記の数字が寄付者への報告の中心になります。
事業費は、事業別に区分して注記することができます(本文22)。また、活動の原価の算定に必要なボランティアによる役務の提供を受け、その金額を合理的に算定できる場合は、その内容を注記することができます(本文26)。これらを注記している法人は、活動報告で「どの事業にいくら使ったか」「ボランティアの力をどれだけ借りたか」を、決算と同じ数字で示せます。会計基準の全体は「NPO法人会計基準の基本」で整理しています。
載せる項目と構成
冊子でもホームページの1ページでも、次の順番で並べると、読み手が知りたいことに早くたどり着けます。
| 順 | 項目 | 書くこと | 分量の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | この1年の要点 | 事業の中心となった数字を3つ程度と、1年を1〜2文でまとめたもの | 冒頭に短く |
| 2 | 団体の目的 | 定款の目的を、読み手に伝わる言葉で1〜2文 | 短く |
| 3 | 事業ごとの実績 | 事業ごとに「何を・誰に・どれだけ」。回数・人数・件数と、前年度からの変化 | 中心 |
| 4 | お金の報告 | 収入の内訳と支出の全体、事業ごとの支出、使途を指定された寄付の使い道と残高 | 表で |
| 5 | 課題と来年度 | うまくいかなかったこと、来年度に取り組むこと | 短く |
| 6 | お礼と参加の案内 | 支えてくれた人へのお礼、寄付・入会・ボランティアの案内 | 最後に |
| 7 | 団体の概要 | 正式名称、所在地、代表者、所轄庁、連絡先、事業年度 | 巻末 |
事業ごとの実績は数字で書く
「多くの方に参加いただきました」ではなく、「年間〇回開催し、延べ〇人が参加しました」のように、回数と人数を入れて書きます。数字は事業報告書に書いたものと一致させます。
数字だけでは伝わらないことは、活動の様子を1つ選んで具体的に書きます。このとき、実際にあったことだけを書き、個人が特定される書き方をしないことが前提です。利用者や参加者の声を載せる場合は、本人の了承を得たものに限ります。写真も、写っている人の同意を得たものを使います。
お金の報告は、読み手の関心に合わせて絞る
活動計算書をそのまま載せると、会計に慣れていない読み手には伝わりません。次のように要点を表にし、詳しい計算書類はホームページや所轄庁で見られることを案内します。
- 収入:会費、寄付金、助成金・補助金、事業収益などの内訳と、前年度との比較
- 支出:事業費と管理費の全体、事業ごとの支出
- 使途を指定された寄付:使途ごとの受入額・使った額・期末残高(会計基準の注記と同じ数字)
寄付の受け入れと記録の仕組みは「NPOの寄付の集め方」で整理しています。
作る順番とスケジュール
事業年度が4月1日〜3月31日の法人を例にすると、次の順番になります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 年度の途中 | 事業ごとの回数・人数を記録し、写真を撮る(同意の確認も) |
| 事業年度の終了後 | 会計を締め、計算書類と注記を作る |
| 事業年度初めの3か月以内(例:6月30日まで) | 事業報告書等を作成し事務所に備え置く。所轄庁の条例で定めるところにより提出する |
| 通常社員総会 | 定款の定めに従い、事業報告や決算を扱う |
| 事業報告書等の作成・総会の後 | 活動報告を作り、寄付者・会員に届ける。ホームページにも載せる |
活動報告を事業報告書等より先に作ると、決算で数字が変わったときに作り直しになります。事業報告書等 → 総会 → 活動報告の順に固定し、毎年同じ時期に発行すると決めておくと、担当者が替わっても続けられます。
届け方
| 届け方 | 向いている相手 | 注意すること |
|---|---|---|
| 郵送(冊子・リーフレット) | 会員、継続して寄付をしている人、メールアドレスを持っていない人 | 印刷と郵送の費用。宛名の管理 |
| メール | メールアドレスを登録している寄付者・会員 | 配信の同意と、配信停止の方法 |
| ホームページ | 団体を調べる人、助成団体、これから寄付を考える人 | 過去の年度の報告も残して、年度ごとに並べる |
| SNS | 活動をまだ知らない人 | 要点の数字と写真を短く。詳しい報告はホームページへ案内する |
寄付者や会員の名簿を使って報告を送るときは、名簿を集めたときに示した利用目的の範囲で使います。申込みの画面に「活動報告の送付に使います」と書いておけば、迷いません。個人情報の取扱いと、ホームページに載せる情報の全体は「NPOのホームページに載せるべき情報」で整理しています。
実行時の落とし穴
- 事業報告書と数字が違う:所轄庁で閲覧できる書類と、寄付者に送った報告の数字が違うと、説明がつかなくなります。数字は事業報告書等から取ります。
- 使途を指定された寄付の使い道を書かない:「〇〇のため」と募った寄付は、その使い道と残高を報告します。会計基準の注記と同じ数字を使います。
- 成果を大きく見せる:実施していない事業、確かめていない効果を書かないでください。うまくいかなかったことも短く書いたほうが、翌年の報告が読まれます。
- 同意のない写真や声を載せる:写っている人、声を寄せてくれた人の了承を得たものだけを使います。
- 税の扱いを誤って書く:認定・特例認定を受けていない法人が、寄付が税の控除の対象になると書かないようにします。控除の扱いは法人の種類で変わります。
- 発行が遅れて翌年度にずれ込む:活動報告は、事業報告書等の作成と総会の後、時期を決めて発行します。
公開前のチェックリスト
- 読み手(寄付者・会員・ボランティア・助成団体)ごとに、知りたいことに答えている
- 事業ごとの実績を回数・人数・件数で書いた
- 数字が事業報告書・計算書類と一致している
- 使途を指定された寄付の使い道と残高を書いた
- 収入の内訳と支出の全体を、表で示した
- 課題と来年度の計画を書いた
- 写真と利用者の声は、本人の了承を得たものだけを使っている
- お礼と、寄付・入会・ボランティアの案内を最後に置いた
- 団体の正式名称・所在地・代表者・所轄庁・連絡先を載せた
- ホームページに、年度ごとに並べて載せた
まとめ
- 活動報告は、法律で作る事業報告書等を材料に、読み手ごとに書き直したもの
- 読み手は寄付者・会員・ボランティア・助成団体。それぞれ知りたいことが違う
- 会計基準の注記(使途を指定された寄付の内訳、事業費の内訳)は、そのまま報告の数字になる
- 構成は「この1年の要点 → 目的 → 事業ごとの実績 → お金 → 課題と来年度 → お礼と参加の案内 → 団体の概要」
- 事業報告書等の作成 → 総会 → 活動報告の順に作ると、数字が食い違わない
参考資料
- 特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第14条の2・第27条・第28条・第29条・第30条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000007
- NPO法人会計基準協議会「NPO法人会計基準」(本文22・26・27): https://www.npokaikeikijun.jp/about_npocas_top/about_npocas/
- 内閣府「2023年度(令和5年度)特定非営利活動法人に関する実態調査 報告書」(令和6年3月): https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/R5_houjin_report.pdf
- 内閣府NPOホームページ「事業報告書等」(Q&A): https://www.npo-homepage.go.jp/qa/ninshouseido/ninshou-houkoku