Google Ad Grants(グーグル・アド・グランツ)は、条件を満たす非営利団体に、1か月あたり最大10,000米ドル分の検索広告のクレジットを提供する Google のプログラムです。費用はかからず、Google 検索の結果ページに文字の広告を出せます。
使うためには、(1) 団体として Google for Nonprofits の参加資格を得る、(2) Ad Grants の審査に通るウェブサイトを用意する、(3) 使い始めたあとも運用の条件を守る、の3段階をすべて満たす必要があります。とくに (3) は、クリック率やコンバージョン(寄付・申込みなどの成果)の条件を満たせずにアカウントが止まる原因になりやすいところです。
この記事では、Google の公式ヘルプ(2026年9月時点で確認)にもとづいて、日本の NPO が対象になる条件、申請の順番、使い始めてから守る条件を整理します。制度の細部は変わることがあるので、申請の前に参考資料のページで最新の記述を確かめてください。
Google Ad Grants でできること・できないこと
Google Ad Grants のよくある質問のページは、制度の要点を次のように説明しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供されるもの | 1か月あたり最大10,000米ドル分の検索広告のクレジット |
| 広告の種類 | Google 検索の結果ページに表示される、文字(広告文)の広告 |
| 費用 | かからない |
| 使い残し | 翌月には繰り越されない |
| 使い切る義務 | ない(利用額に関する要件はない) |
| 表示の順番 | 有料広告より後に、別に行われるオークションの結果として表示される |
| 有料の Google 広告との併用 | できる。画像や動画の広告、リマーケティングなどは有料のアカウントで行う |
「月に10,000ドル分使える」と聞くと大きな広告費に見えますが、使い切る必要はなく、表示されるのは有料広告の後です。団体のことを具体的な言葉で探している人に、団体のページを見つけてもらうための仕組みと考えると、期待する成果を見誤りません。
NPO の広報の中では、ホームページへの入口を1つ増やす手段です。広告の飛び先になるホームページの中身が整っていないと、審査にも運用にも通りません。ホームページに載せる情報は「NPOのホームページに載せるべき情報」で先に整えておくと、次の章の要件の多くを満たせます。
対象になる団体の条件
すべての国に共通の条件
Google for Nonprofits の「資格に関するガイドライン」は、参加の条件として次の3つを挙げています。
- 対象の国・地域で慈善団体として登録されていて、Google for Nonprofits の審査担当パートナーである Goodstack によって非営利団体として認定されていること
- その国・地域で定められた要件を満たしていること
- Google for Nonprofits の追加利用規約に同意していること
次の団体は参加できません。
- 政府事業体や政府機関
- 病院や医療団体(医療団体に関連する慈善部門や財団法人は可)
- 学校、学術機関、大学(教育団体の慈善事業部門は可)
日本で対象になる法人格
同じガイドラインの日本の要件には、次の法人格が挙がっています。
| 法人格 | ガイドラインの記載 |
|---|---|
| 公益社団法人 | 公益社団法人 |
| 公益財団法人 | 公益認定等委員会により認定された公益財団法人 |
| 特定非営利活動法人(NPO 法人) | 市町村または都道府県の認定を受けた特定非営利活動法人 |
| 社会福祉法人 | 市町村、都道府県、厚生労働省のいずれかから認可を受けた社会福祉法人 |
| 一般社団法人 | 一般社団法人 |
法人格を持たない任意団体は、この一覧に入っていません。 一般財団法人も一覧にありません。
NPO 法人の行の「認定」は、同じページの英語版では “certified by the city government or prefectural government” と書かれています。NPO 法の用語でいう「認定 NPO 法人」(税制上の優遇を受ける法人)に限る書き方ではなく、所轄庁の設立の認証を受けた法人を指すと読めますが、自団体が対象になるかに迷うときは、申込みの前に Google for Nonprofits のヘルプで最新の記載を確かめてください。認定 NPO 法人の制度そのものは「認定NPO法人の要件と申請」で整理しています。
Ad Grants に固有の条件
Google for Nonprofits の資格とは別に、Ad Grants を使うには、Google のウェブサイトに関するポリシーに適合する質の高いウェブサイトを持っていることと、プログラムのポリシーに適合できることが必要です(Google Ad Grants のよくある質問)。
ウェブサイトの要件
Ad Grants の「ウェブサイトに関するポリシー」は、広告の飛び先になるサイトに次のことを求めています。申請の前に、自団体のサイトを1つずつ照らし合わせてください。
| 要件 | ポリシーの内容 | 確かめること |
|---|---|---|
| ドメインの所有 | 広告のリンク先のドメインを団体が所有し、内容・構造・技術的な設定を管理できること。.org は必須ではない | 外部サービスの団体ページではなく、自団体で管理するサイトか |
| 独自の内容 | ミッションと活動に直接関係する、十分な量のオリジナルの内容があること | 「作成中」のページや、他サイトの転載ばかりのページがないか。主要な情報が PDF だけになっていないか |
| ミッションと活動の明示 | 初めて訪れた人が、団体の目的と活動をすぐ理解できること | トップページか団体概要のページに、目的・主な事業・対象者が書かれているか |
| 使いやすさ | メニューが分かりやすく、リンク切れがないこと。寄付ボタンが正しく動くこと | 404 のページ、中身が空のリンク先がないか |
| 表示の速さ・スマートフォン対応 | さまざまな端末ですばやく読み込まれ、画面の大きさに合わせて表示されること | スマートフォンで主要なページを開いて確かめる |
| HTTPS | サイト全体を HTTPS で配信すること | 証明書の期限切れや、一部の画像だけ http で読み込む「混合コンテンツ」がないか |
| 営利活動・広告の制限 | ミッションが中心であること。ミッションに関係する物販など限定的な営利活動は認められる場合があるが、主目的にはできない。AdSense などの第三者の広告を過剰に載せたり、アフィリエイトリンクで他サイトへ誘導することを主目的にしたりできない | サイトに AdSense の広告を表示していないか。寄付の手続きが HTTPS の専用ページで完結するか |
ポリシーは、審査で不承認になりやすい原因として、独自の内容の不足、目的が分かりにくいこと、操作しにくいサイトやリンク切れ(特に寄付ボタン)、読み込みの遅さを挙げています。ホームページを新しく作っている途中で申請しないほうが、やり直しの手間がかかりません。
申請から配信までの流れ
申請は、団体の資格の確認(Google for Nonprofits)と、Ad Grants の有効化の2段階に分かれます。
段階1:Google for Nonprofits に申し込み、Goodstack の審査を受ける
- Google for Nonprofits のサイトで[使ってみる]をクリックし、手順に沿って団体の情報を入力します。
- 入力した情報は Google から Goodstack に送られ、団体が法規に沿って登録され活動している非営利団体か、申請した人がその団体に所属しているかが審査されます。
- Goodstack から追加の情報や資料を求めるメールが届くことがあります。Google のヘルプは、
[email protected]からのメールを迷惑メールのフォルダも含めて確かめるよう案内しています。ほとんどのリクエストは3〜5営業日以内に審査されるとしています。
段階2:Ad Grants を有効化する
Google のヘルプ「Google Ad Grants」は、有効化の手順を次の4つのステップで説明しています。
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1 | ウェブサイトが HTTPS で保護され、ウェブサイトに関するポリシーの基準を満たしていることを確かめる |
| 2 | Google for Nonprofits にログインし、Google Ad Grants の下の[使ってみる]をクリックして、Ad Grants に使うウェブサイトを入力する |
| 3 | 紹介動画(5分ほど)を見て、見終わったことを確認するチェックボックスをオンにする |
| 4 | [有効化リクエストを送信]をクリックする。審査の後、詳しい手順を書いたメールが届く。審査には通常3〜5営業日かかる |
このとき、次の2点に注意します。
- 有効化の手続き中に、自分で Google 広告のアカウントを作らない。 有効化の際にアカウントが提供されます。
- Ad Grants のアカウントと Google for Nonprofits のアカウントのユーザー名は同じになる。 個人のメールアドレスで登録すると、そのアドレスが Ad Grants にも関連付けられます。担当者の異動に備えて、団体として管理するアドレスで登録し、有効化の後にほかの担当者をユーザーとして招待しておくと引き継ぎが楽です。
使い始めてから守る条件
Ad Grants は、有効化されれば終わりではありません。「アカウント管理に関するポリシー」と「非営利キャンペーン」のポリシーを守れないと、アカウントが止まります。違反が見つかったアカウントは予告なく自動停止されることがあるとされています。
アカウントの設定と成果の条件
| 条件 | ポリシーの内容 |
|---|---|
| 地域ターゲティング | 団体の情報やサービスが役に立つ地域で広告が表示されるよう、特定の地域を指定する。主に地元で活動する団体は、活動する町や地域でのみ表示する |
| サイトリンク | 固有のサイトリンク広告アセットを2つ以上設定する |
| クリック率 | アカウント全体の毎月のクリック率(CTR)を5%以上に保つ。各キーワードで5%を保つ必要はない。2か月連続で満たせないと一時的に停止される |
| コンバージョントラッキング | 寄付、会員登録、メール配信の登録、ボランティアの登録、情報リクエスト、電話の問い合わせなどを成果として計測する。2019年4月22日以降に作成されたアカウントは、1か月に1回以上のコンバージョンを獲得する必要がある。サイトの滞在時間やトップページへのアクセス数は「コンバージョン」に含めない |
| 入札 | 2019年4月22日以降に作成されたアカウントは、すべてのキャンペーンで「コンバージョン数の最大化」「コンバージョン値の最大化」「目標アクション単価」「目標広告費用対効果」のいずれかを使う(スマート アシスト キャンペーンを除く) |
| アンケート | Google から定期的に届くプログラムのアンケートに、正確かつ詳細に回答する |
入札について、Google のヘルプは、最初は「クリック数の最大化」で初期のデータを集めてもよいが、速やかにコンバージョントラッキングを実装し、十分なデータが得られ次第コンバージョンにもとづく入札に切り替えるよう案内しています。切り替えの目安は、直近30日間のコンバージョンが15〜30件に達したときとしています。
使えないキーワード
「非営利キャンペーン」のポリシーは、広告とキーワードが団体の主な活動目的を反映し、プログラムやサービスと関連が強いことを求め、次のキーワードを禁止しています。
- 1語のキーワード(団体が所有するブランド名、一般的な病名、頭字語、例外として示された少数のキーワードを除く)
- 一般的すぎるキーワード(ポリシーの例では「面白い動画」「電子書籍」「今日のニュース」など)や、他の団体の名前・地名・歴史上の出来事・人名などの単独での使用。「[市町村名] の博物館」のように組み合わせれば使える
- 品質スコアが1または2のキーワード(自動化ルールで自動的に一時停止する設定が案内されている)
違反が見つかったキーワードは、予告なくステータスが変わり一時停止されます。
運用の準備:誰が、何を、いつ見るか
上の条件は、Google 広告の管理画面を毎月見ていれば守れるものです。止まる原因の多くは、有効化した担当者しか仕組みを知らず、誰も画面を見なくなることにあります。事務局の中で次のように分担を決めておくと、担当者が替わっても続けられます。
| 頻度 | やること | 見る場所 |
|---|---|---|
| 有効化の前 | 成果として数える行動(寄付・入会・ボランティア申込み・問い合わせ)を決め、それぞれの完了ページを用意する | 自団体のサイト |
| 有効化の直後 | コンバージョントラッキング、地域ターゲティング、サイトリンク2つ以上を設定する | Google 広告の管理画面 |
| 毎月 | アカウント全体のクリック率、コンバージョンの件数、品質スコアが1・2のキーワードの有無を確かめる | Google 広告の管理画面 |
| 随時 | Ad Grants チームからのメールとアンケートに回答する | 登録したメールアドレス |
キーワードは、団体の事業の名前と、支援を受けたい人・参加したい人が実際に使う言葉を組み合わせて考えます。たとえば活動地域の地名と事業の内容を組み合わせる形で、「[市町村名]」だけ、「ボランティア」だけのような1語や単独の語は使えません。広告の飛び先は、トップページよりも、その言葉に答えるページ(事業の説明、ボランティア募集、寄付のページなど)にします。ボランティア募集のページの作り方は「ボランティアの募集と受け入れ」、寄付の窓口の作り方は「NPOの寄付の集め方」で整理しています。
実行時の落とし穴
- ホームページが整う前に申請する:独自の内容が少ない、リンク切れがある、寄付ボタンが動かないといった状態は、不承認の原因として公式に挙げられています。
- 個人のアカウントで登録する:Google for Nonprofits と Ad Grants のユーザー名は同じになります。担当者の個人アドレスで登録すると、異動や退職のときに引き継げなくなります。
- 成果の計測を後回しにする:コンバージョンが月1回以上ないと条件を満たせません。問い合わせや申込みの完了ページを先に用意しておきます。
- 1語のキーワードを入れる:団体名などの例外を除き、1語のキーワードは使えません。
- 止まったまま放置する:一時停止されても、条件を満たすよう直したうえでアカウントの復元をリクエストできます。原因(クリック率・コンバージョン・入札・アンケート)を確かめて直します。
まとめ
- Google Ad Grants は、月最大10,000米ドル分の検索広告のクレジット。使い切る義務はなく、使い残しは繰り越されない
- 日本では公益社団法人・公益財団法人・NPO 法人・社会福祉法人・一般社団法人が対象で、Goodstack の認定が前提。任意団体は一覧にない
- 広告の飛び先のウェブサイトは、団体が所有し、独自の内容と明確なミッションがあり、HTTPS で動作すること
- 申請は Google for Nonprofits(Goodstack の審査)→ Ad Grants の有効化(4ステップ、審査は通常3〜5営業日)の順
- 使い始めたら、クリック率5%以上、月1回以上のコンバージョン、地域ターゲティング、サイトリンク2つ以上、コンバージョンにもとづく入札、キーワードの制限を守る
参考資料
- Google for Nonprofits「Ad Grant の要件とプログラムに関するよくある質問」: https://www.google.com/intl/ja_jp/grants/faq/
- Google 非営利団体ヘルプ「資格に関するガイドライン」: https://support.google.com/nonprofits/answer/3215869?hl=ja
- Google 非営利団体ヘルプ「Goodstack の審査を受ける」: https://support.google.com/nonprofits/answer/12016036?hl=ja
- Google 非営利団体ヘルプ「Google Ad Grants」(有効化の手順): https://support.google.com/nonprofits/answer/6077350?hl=ja
- Google 非営利団体ヘルプ「ウェブサイトに関するポリシー」: https://support.google.com/nonprofits/answer/1657899?hl=ja
- Google 非営利団体ヘルプ「アカウント管理に関するポリシー」: https://support.google.com/nonprofits/answer/117827?hl=ja
- Google 非営利団体ヘルプ「非営利キャンペーン」: https://support.google.com/nonprofits/answer/4410314?hl=ja
- Google 非営利団体ヘルプ「Ad Grants ポリシー準拠ガイド」: https://support.google.com/nonprofits/answer/9314402?hl=ja