事業計画書・活動予算書は、「来年度、何を・いくらの見込みで行うか」を総会で承認してもらうための資料です。事後に作る事業報告書(決算後、所轄庁への提出が法律で定められている書類)とは役割が異なります。この記事では、両者の違いと、総会に出す前にそろえる手順を整理します。
1. 事業報告書との違い
| 事業計画書・活動予算書 | 事業報告書等 | |
|---|---|---|
| 時点 | これから始まる事業年度(見込み) | 終わった事業年度(実績) |
| 根拠 | 設立時は特定非営利活動促進法第10条第1項(認証申請の添付書類)。設立後の毎年分は各団体の定款 | 特定非営利活動促進法第28条第1項(毎事業年度、作成・所轄庁への提出が必要) |
| 承認・確認の場 | 多くの団体で総会(定款で定めた機関) | 監事の監査を経て、定款で定めた機関の承認 |
| 主な内容 | 事業ごとの計画と、収益・費用の見込み | 実施した事業の内容と、実際の収支・財産の状況 |
活動予算書は、特定非営利活動促進法第10条第1項第8号で「その行う活動に係る事業の収益及び費用の見込みを記載した書類」と定義されています。この定義は設立時の添付書類についてのものですが、毎年度の予算書を作る際の内容の目安にもなります。事業報告書の作り方は、NPO法人の事業報告書|提出期限・5つの書類・作る順番で整理しています。
2. 事業計画書に書く内容
- 事業ごとの目的・内容:特定非営利活動に係る事業(本来事業)と、その他の事業(収益事業等)を分けて書く
- 実施時期・実施場所:年間のスケジュールが分かる形で書く
- 継続事業と新規事業の区別:前年度からの継続か、新たに始める事業かを明記する
- 体制:事業を担当する役員・職員・ボランティアの見込み
定款で定めた「特定非営利活動に係る事業」の種類(定款に記載された事業の種類)と対応させて書くと、後から定款に定めのない事業を行っていないかを確認しやすくなります。
3. 活動予算書に書く内容
活動予算書は、事業ごとの収益・費用の見込みを積み上げて作ります。
| 区分 | 内容の例 |
|---|---|
| 経常収益 | 会費、寄付金、助成金・補助金、事業収益(受託事業、自主事業) |
| 経常費用 | 事業費(事業を実施するためにかかる費用)、管理費(事務局運営にかかる費用) |
会費・寄付金は、前年度の実績や、すでに約束されている金額をもとに、過大に見込まないようにします。助成金・補助金は、申請中・未確定のものと、交付が決まっているものを区別して記載すると、総会での説明がしやすくなります。
4. 総会に出す前にそろえる手順
- 前年度の事業報告・決算の状況を確認する:継続事業の実績、収支の傾向を把握する
- 翌年度の事業を洗い出す:継続事業・新規事業・終了予定の事業を整理する
- 事業計画書を作成する:事業ごとの目的・内容・実施時期をまとめる
- 活動予算書を作成する:事業計画に対応する収益・費用を積み上げる
- 事業計画と予算の整合を確認する:計画に無い事業の予算が計上されていないか、計画した事業に対応する予算が抜けていないかを確認する
- 理事会で事前確認する:総会の前に、理事会など定款で定めた機関で内容を確認する
- 総会資料として準備する:招集通知にあわせて資料を送付し、質疑に備える
5. 事業年度の途中で計画を見直す場合
助成金の採否が事業年度の途中で決まる、想定していなかった依頼が入るなど、当初の事業計画・予算どおりに進まないことは珍しくありません。その場合の考え方は次のとおりです。
- 軽微な変更か、計画の見直しが必要な変更かを区別する:金額や内容の変動が小さいものは、実施状況として記録し、次の総会(または理事会)で報告すれば足りることが多くあります
- 事業の追加・廃止など、計画の前提が変わる変更は、定款の議決機関に諮る:総会が事業計画を議決事項としている場合、計画に無い事業を新たに行う、または計画していた事業を取りやめるといった変更は、あらためて機関の承認を得るのが原則です
- 変更の経緯を記録に残す:どのような理由で、いつ、どのように変更したかを議事録等に残しておくと、後から作成する事業報告書との整合が取りやすくなります
事業計画・予算は「一度決めたら動かせないもの」ではなく、変更が必要になった際にどの機関にどう諮るかを、あらかじめ定款や内部規程で決めておくと、年度途中の対応がしやすくなります。
6. 落とし穴
- 前年度の予算書をそのまま流用する:継続事業でも金額や体制が変わっていることが多く、見直さずに使うと実態と合わなくなります
- 収益の見込みを楽観的に見積もる:未確定の助成金・補助金を確定額として計上すると、実際の収支と乖離します
- 事業計画と予算の対応関係が総会資料から読み取れない:どの事業にいくらかかるかが分からないと、総会での質疑に答えにくくなります
- 定款の議決機関を確認せずに進める:事業計画・予算の承認機関は団体ごとに定款で異なるため、必ず確認します
7. まとめ
- 事業計画書・活動予算書は「これから」の見込み、事業報告書は「終わった」実績という役割の違いがある
- 活動予算書は「事業の収益及び費用の見込みを記載した書類」(特定非営利活動促進法第10条第1項第8号)
- 設立後の毎年度分の作成・承認手続きは、各団体の定款で定めた機関にもとづく
- 事業計画と予算の整合、前年度からの見直し、収益見込みの過大計上に注意する
参考資料
- 特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第10条・第28条(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC1000000007