NPO 法人の監事の仕事は、理事の業務執行の状況と法人の財産の状況の2つを監査し、問題があれば総会や所轄庁に報告することです(特定非営利活動促進法〈以下「NPO 法」〉第18条)。会計の数字だけを見る役ではありません。理事会で決めたとおりに事業が進んでいるか、定款や法令に反していないかも監査の対象です。

監事は理事や職員を兼ねられず(第19条)、代表権もありません。内側の人でありながら執行には加わらない、という位置にいるからこそ、決算の直前に書類へ判を押すだけで終わらせず、年に何度か決まった点を見て、見た結果を書面に残すことが大切です。この記事では、法律と内閣府の手引きをもとに、監事が何をいつ見て、どうまとめて報告するかを整理します。

監事の職務は法律で5つに決まっている

NPO 法第18条は、監事の職務を次の5つと定めています。

号職務中身
第1号業務の監査理事の業務執行の状況を監査する
第2号財産の監査法人の財産の状況を監査する
第3号報告監査の結果、業務または財産に関し不正の行為、または法令・定款に違反する重大な事実を見つけたら、社員総会または所轄庁に報告する
第4号総会の招集第3号の報告のために必要なら、社員総会を招集する
第5号意見業務執行の状況や財産の状況について、理事に意見を述べる

第1号と第2号が「見る」仕事、第3号から第5号が「伝える」仕事です。ふだんの小さな気づきは第5号の意見として理事に伝え、重大な問題があるときだけ第3号の報告に進む、という段階があります。

内閣府の手引きの定款例も、監事の職務として同じ5つを並べています。自団体の定款の「役員の職務」の条に、監事の職務がこの形で書かれているかを最初に確かめてください。

監事になれる人、なれない人

監査を始める前に、監事自身がその席に座れる人かを確かめておきます。ここが崩れていると、監査の中身がどれだけ丁寧でも、法人の運営に傷が残ります。

  • 理事や職員を兼ねていない(第19条)。事務局で給与を受けて働きながら監事を務めることはできません
  • 親族の制限に当たらない(第21条)。それぞれの役員について、その配偶者や3親等以内の親族が1人を超えて役員に含まれてはならず、役員本人とその配偶者・3親等以内の親族が役員総数の3分の1を超えてはなりません。理事長の親族が監事になっている場合は、この制限に当たらないかを確かめます
  • 任期が切れていない(第24条)。任期は2年以内で定款で定める期間です。監事の改選を忘れていないかは、役員の任期の一覧で確かめます

監事の人数が減ったときは、定数の3分の1を超える欠員が出ていないかも見ます。超えたときは遅滞なく補充しなければなりません(第22条)。改選と届出の手順は「役員の改選と変更の届出」にまとめています。

1年のどこで何を見るか

監事の監査は、決算のときの1回だけにすると、1年分の書類を短い期間で見ることになり、どうしても表面をなでるだけになります。次のように、年に数回の区切りで見る形にすると、負担が分散し、問題にも早く気づけます。

時期見るもの主な確かめ方
理事会のたび議事録、決まったことの進み具合前回決めたことが実行されているか。議事録が作られ、保管されているか
期中(半期ごとなど)通帳・現金の残高、主な支出、契約帳簿の残高と通帳の残高が合っているか。大きな支出に理事会の承認や決裁の記録があるか
決算のあと、総会の前事業報告書、活動計算書、貸借対照表、財産目録書類どうしの数字が合っているか。事業報告の中身が実際の活動と合っているか
総会監査の結果の報告書面にまとめた結果を総会で報告する

内閣府の定款例では、決算に関する書類は毎事業年度終了後、速やかに理事長が作成し、監事の監査を受け、総会の議決を経るとされています(定款例第46条)。事業報告書等は、毎事業年度初めの3か月以内に作成して事務所に備え置き(NPO 法第28条第1項)、毎事業年度1回所轄庁に提出します(第29条)。決算書類が監事の手元に届いてから総会までの日数が短すぎないよう、事務局と監事に書類を渡す日を年間の予定に入れておきます。年間の流れは「事務局の年間スケジュール」を参考にしてください。

業務の監査で見るところ

業務の監査は「理事が、定款と理事会・総会の決定に沿って仕事をしているか」を確かめることです。数字では表れない部分なので、書類を決めて見ると迷いません。

  • 議事録:理事会・総会が定款どおりに開かれ、議事録が作られている。決議に必要な人数がそろっている
  • 決定と実行:理事会で決めた事業・契約・人事が、決めたとおりに実行されている。決めていないことが実行されていない
  • 事業の範囲:行っている事業が、定款に書いた目的と事業の範囲に収まっている。その他の事業を行っている場合、定款に定めがある
  • 契約:委託契約や賃貸借契約など主な契約が、定款や規程で定めた決裁を経て結ばれている
  • 届出と備置き:役員の変更、定款の変更、事業報告書等の提出など、所轄庁への手続きが期限内に済んでいる。事務所に置くべき書類がそろっている
  • 利益相反:法人と理事の利益が相反する取引(理事個人からの物の購入や、理事への貸付けなど)が無いか。そうした事項では理事は代表権を持たず、所轄庁が特別代理人を選任することになっている(第17条の4)ため、該当する取引があった場合はこの手続を経ているか

届出と備置きの対象は「事業報告書の作り方と提出」に一覧があります。

財産の監査で見るところ

財産の監査は「帳簿と書類が、法人のお金と財産の実際の姿を表しているか」を確かめることです。NPO 法第27条は、会計簿を正規の簿記の原則に従って正しく記帳すること、計算書類と財産目録を会計簿にもとづいて真実な内容を明瞭に表示したものとすることを、会計の原則として定めています。監事はこの原則に照らして次を見ます。

  • 残高の突き合わせ:期末の預金残高が、通帳(または金融機関の残高証明)と帳簿で一致している。現金の残高を実際に数えて帳簿と合わせている
  • 大きな支出の裏付け:一定額を超える支出に、請求書・領収書と、理事会の承認や決裁の記録がそろっている
  • 書類どうしの一致:貸借対照表と財産目録の金額が一致している。貸借対照表の正味財産と活動計算書の次期繰越正味財産額が一致している
  • 前年との比較:科目ごとに大きく増減したものについて、理由の説明を受けている
  • 会計の基準の継続:採用している会計処理の基準と手続を、毎年同じように使っている(第27条第4号)

計算書類を読むときの着眼点と、監事向けの細かいチェックリストは「NPO法人会計基準の基本」にまとめています。監事は税務申告の中身を判断する役ではありません。法人税や消費税の扱いに疑問があれば、理事会に確認を求め、必要なら団体として税理士や税務署に確かめるよう意見を述べます。

監査の結果を書面にまとめる

NPO 法には、監査の結果をまとめる書面の様式の定めはありません。それでも、何を見て、どう判断したかを書面に残すことは、監事自身を守ることにもつながります。総会の資料に綴じる形が一般的で、次の項目を入れておくと、後から読んだ人にも中身が伝わります。

項目書くこと
対象の期間○年○月○日から○年○月○日までの事業年度
監査した書類事業報告書、活動計算書、貸借対照表、財産目録、会計帳簿、議事録など
監査の方法理事や事務局から説明を受けた、帳簿と通帳を突き合わせた、理事会に出席した、など実際に行ったこと
結果業務の執行について、財産の状況について、それぞれ不正や法令・定款に違反する重大な事実があったかどうか
意見理事に改善を求めたことがあれば、その内容
日付と監事の氏名監査を終えた日と、監事全員の氏名

「適正と認めます」とだけ書くのではなく、監査の方法の欄に実際にしたことを書くのがこつです。見ていないものを見たように書かないことが、監査の書面の信頼を支えます。

不正や重大な違反を見つけたとき

監査の中で気になる点が出てきたら、まずは第5号の意見として、理事に説明と是正を求めます。記帳の誤りや手続の漏れなど、直せば済むものは、直したことを確かめて書面の意見の欄に残します。

そのうえで、不正の行為や法令・定款に違反する重大な事実を見つけたときは、社員総会または所轄庁に報告します(第18条第3号)。報告のために必要なら、監事は自ら社員総会を招集できます(第4号)。社員総会の招集の通知は、総会の日より少なくとも5日前に、目的である事項を示し、定款で定めた方法で行います(第14条の4)。

所轄庁は、法令や定款に違反する疑いがあると認める相当な理由があるとき、法人に報告を求めたり、事務所に立ち入って検査したりできます(第41条。認定 NPO 法人と特例認定 NPO 法人は別の条による)。監事の報告がそのきっかけになることもあるため、報告する前に、事実と根拠の書類をそろえておきます。

実行時の落とし穴

  • 判を押すだけの監査:決算書類を受け取ったその場で押印して返すと、監査の方法として説明できることが残りません。少なくとも残高の突き合わせと、書類どうしの一致は自分で確かめます
  • 監事が事務を手伝っている:人手が足りない団体で、監事が経理や事務局の仕事を手伝っているうちに、職員と同じ働き方になっていることがあります。第19条の兼職の禁止に当たらないよう、役割を分けます
  • 監査の時間がない:総会の直前に書類が届くと、見る時間がありません。書類を渡す日を事務局と先に決めておきます
  • 口頭だけの指摘:理事への意見を口頭だけで済ませると、翌年に同じことが起きても経緯が分かりません。意見は日付を付けて書き残します
  • 認定 NPO 法人の要件を見落とす:認定の基準の1つとして、会計について公認会計士もしくは監査法人の監査を受けているか、または内閣府令で定めるところにより帳簿と書類を備え付けて取引を記録し、保存していることが求められます(第45条第1項第3号ハ)。認定を受けている、または目指している法人は、帳簿と書類の保存の状態も監査の中で見ておきます。認定の全体は「認定NPO法人の要件と申請」をご覧ください

まとめ

監事の監査は、業務と財産の2本立てです。年に数回の区切りで議事録・通帳・帳簿・計算書類を見て、見たことと判断を書面に残し、総会で報告します。ふだんの気づきは理事への意見として伝え、不正や重大な違反を見つけたときは総会または所轄庁に報告します。まずは自団体の定款で監事の職務と決算の承認の流れを確かめ、事務局と「書類を監事に渡す日」を年間の予定に入れるところから始めてください。

「運営・法務」の記事一覧では、所轄庁への報告や役員の手続きをほかにも扱っています。

参考資料