助成金は、交付が決まった時点ではなく、対象事業が終わって実績報告と精算を終えた時点でようやく完結します。 申請時に書いた見込みの経費ではなく、交付決定通知書に書かれた対象事業・対象経費・助成決定額を基準に、実際に使った経費を報告し、過不足を精算します。この記事では、助成金の実績報告・精算で共通して求められる考え方と、証憑の扱いを整理します。様式や保存期間は助成元ごとに違うため、採択時に受け取る交付要綱・実績報告の手引きを必ず確認してください。
助成金の探し方・申請書の書き方は「NPOの助成金の探し方と申請書の書き方」で整理しています。
精算の基準は「交付決定」であって「申請」ではない
申請書に書いた経費の見込みと、交付決定額は一致しないことがあります。審査の過程で一部の費目が減額されたり、対象外とされたりするためです。
精算報告は、申請書ではなく交付決定通知書に書かれた内容を基準に行います。 交付決定で減額された項目・金額を確認したうえで、実際の支出をその範囲に収めて報告します。助成決定額を超える金額を精算で請求することはできません。
実績報告で提出する書類の構成
助成元によって様式は異なりますが、代表的な構成を押さえておくと準備がしやすくなります。
社会福祉法人中央共同募金会が公表している助成事業の活動報告の手引き(2018年9月・第1版)では、最終精算時に必須の書類として次の4点を挙げています。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 精算明細書(精算書) | 費目ごとの支払項目・単価・数量・金額を記入した明細 |
| 収支報告書 | 助成事業全体の収入・支出をまとめた報告書 |
| 請求書 | 精算額(助成決定額の範囲内)の請求 |
| 活動報告書 | 実施した活動の内容・成果の報告 |
この手引きでは、1つの品目について1万円以上の支出は領収書の写しの提出が必要とされ、領収書の写しに番号を振り、精算明細書の該当する支払項目にその番号を記入して突き合わせる方法が案内されています。
独立行政法人福祉医療機構(WAM)の社会福祉振興助成事業でも、助成事業完了時に支出管理表、事業実績及び自己評価書、アンケート集計結果、社会福祉振興助成事業に関する意見書、消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額の報告などの提出が求められています。助成元によって書類の名称や点数は異なりますが、「支出の明細」「活動の実績」「自己評価・意見」の3種類の情報を求められる点は共通しています。
証憑(領収書等)の扱い
- 支払った経費ごとに、領収書・レシート・契約書などの証憑を保管する。 宛名が団体名になっているかを支払い時に確かめておくと、後から宛名の修正を依頼する手間がなくなります。
- 証憑と精算明細書の記載を、番号などで突き合わせられるようにする。 支払項目が多い費目(交通費、消耗品費など)は、内訳を明細にまとめ、合計額を精算書に記入する方法が一般的です。
- 証憑の保存期間は助成元の交付要綱・手引きで指定された年数に従う。 助成元によって年数が異なるため、実績報告を提出した後も、指定された期間は破棄せずに保管します。
費目間の流用ができない理由
助成金は、申請書で示した対象事業・対象経費に使うことを条件に交付されています。そのため、
- 決定した費目の金額を、他の費目に回して使うこと(流用)は、原則としてできません。 使わなかった費目の経費を、超過した別の費目に充てることも同様です。
- 事業の実施中に、経費の内容や金額を変える必要が生じた場合は、実施前に助成元へ使途変更の相談をし、承認を得てから変更します。 承認を得ずに変更すると、変更部分が精算の対象外になることがあります。
- 助成金(報酬・委託費も同様)を、対象経費以外の支払いに充てることはできません。 これは、国の補助金に共通する原則を定めた「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」の考え方とも一致します。同法は、補助金等の不正な使用を防ぐことを目的に、交付の決定の取消しと返還のしくみを定めています。民間の助成金についても、多くが交付要綱で同様の目的外使用の禁止と返還の規定を置いています。
精算の結果、残金が出た場合・超過した場合
| 結果 | 扱い |
|---|---|
| 実績が交付決定額を下回った(残金が出た) | 残金を助成元に返還する。精算明細書・収支報告書で実際の支出額を報告し、助成決定額との差額を確定させる |
| 経費が交付決定額を超過した | 超過分は団体の自己資金で負担する。助成元への追加請求はできない |
| 対象経費以外に使ってしまった | 目的外使用として、交付の取消し・返還を求められることがある。気づいた時点ですみやかに助成元に相談する |
助成金の多くは、対象事業と実施期間が決まっているため、NPO法人会計基準では使途が制約された寄付金等として扱われ、年度をまたいで未使用の額がある場合は前受助成金等として処理します。会計上の計上時期は「NPO法人会計基準の基本」で整理しています。
実績報告・精算のチェックリスト
- 交付決定通知書の対象事業・対象経費・助成決定額を確認した
- 支出のたびに、団体名での領収書・証憑を受け取り、費目ごとに整理した
- 一定額以上の支出について、助成元が求める証憑の添付方法を確認した
- 精算明細書・収支報告書・請求書・活動報告書など、必要な書類の一覧を交付要綱で確認した
- 費目間の流用をしていないか、使途変更が必要な場合は事前に相談したか確認した
- 助成決定額を超える請求をしていないか確認した
- 証憑の保存期間を確認し、実績報告の提出後も保管を続ける体制にした
まとめ
助成金の実績報告と精算は、申請時の見込みではなく交付決定の内容を基準に行います。精算明細書・収支報告書・請求書・活動報告書など助成元が求める書類をそろえ、一定額以上の支出には証憑の写しを添付します。費目間の流用は原則できず、使途を変えたい場合は事前に助成元へ相談します。対象経費以外に使った場合は返還を求められることがあるため、迷った支出は使う前に助成元へ確認することが、後から返還を求められる事態を防ぎます。
参考資料
- 社会福祉法人中央共同募金会「活動報告の手引き(短期活動用)」(2018年9月・第1版): https://www.akaihane.or.jp/
- 独立行政法人福祉医療機構(WAM)社会福祉振興助成事業: https://www.wam.go.jp/hp/
- 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/330AC0000000179