NPOの「会費」は、ひとくくりに語られがちですが、誰からの、何に対する対価なのかによって性格が分かれ、定款上の扱いも会計上の区分も変わります。会費の設計を会員区分の整理から始めずに金額だけを決めると、議決権の範囲があいまいになったり、会計処理を後から直すことになったりします。この記事では、特定非営利活動促進法(以下「NPO法」)の社員に関する定めと、NPO法人会計基準の区分にもとづいて、会費の設計と会員を継続してもらうための運用を整理します。

会員区分を先に決める

NPO法上、総会で議決権を持つ会員を「社員」といいます。社員の資格の得喪に関する事項は、定款の必要的記載事項です(NPO法第11条第1項第5号)。また、各社員の表決権は平等です(第14条の7)。

一方で、NPO法は社員以外の会員の種類や会費の金額までは定めていません。多くの団体は、実務上、次のような区分を設けています。

会員区分NPO法上の位置づけ性格
正会員社員(総会の議決権を持つ)団体の意思決定に参加する会員。会費は会の運営を支える負担金の性格が強い
賛助会員社員ではない(定款で議決権を持たせない設計が一般的)実質的には定期的な寄付者に近い。会報や活動報告の受け取りなど、限られた見返りを設けることが多い
利用会員・サービス会員など社員ではない継続的にサービスや物品の提供を受ける。会費は対価としての性格が強い

正会員(社員)の資格の得喪や、議決権の扱いを変える場合は、定款変更の手続きが必要です。 定款に定める事項と手続きの全体は、所轄庁の定款例・手引きで確かめてください。

会費の会計上の区分

NPO法人会計基準は、受取会費について、確実に入金されることが明らかな場合を除き、実際に入金したときに収益として計上するよう定めています。会員から前もって受け取った翌期以後の分は、前受会費として負債に計上します。

さらに、会費という名称であっても、性格によって次のように区分されます。

科目会費の性格
正会員受取会費総会の議決権を持つ会員(社員)の会費
賛助会員受取会費議決権を持たない会員の会費のうち、実質的に定期的な寄付にあたるもの
事業収益(○○利用会員受取会費など)継続的にサービスや物品の提供を受ける会員の会費で、サービス利用の対価としての性格を持つもの

「会費」という名称がついていても、実態が特定のサービスの対価であれば、事業収益として区分します。 名称ではなく、実際にお金をやり取りする理由で区分するのが基準の考え方です。会計の全体の構造は「NPO法人会計基準の基本」で解説しています。

対価性のない会費(正会員・賛助会員の会費)と、対価性のある会費(事業収益に区分される会費)の違いは、認定NPO法人のパブリック・サポート・テスト(PST)の判定でも関係してきます。 対価性が認められず実質的に贈与と認められる賛助会員の会費は、寄付に近い性格を持つためです。認定の基準は「認定NPO法人の要件と申請」を参照してください。

会費の金額を設計する手順

  1. 会員区分を決める:正会員(議決権あり)、賛助会員(議決権なし)、利用会員など、自団体に必要な区分を定款に沿って整理します。
  2. 区分ごとに、会員が受け取るものを決める:議決権、総会への参加、会報・活動報告、イベントの優待、サービスの利用など。対価性のある特典を多く設けるほど、会計上は事業収益に近づきます。
  3. 金額を決める:運営に必要な経費から会費収入の目標額を割り出し、想定する会員数で割って金額を決めます。既存の会員数が少ない場合は、会費だけに頼らず、寄付・助成金とのバランスも合わせて検討します。資金源の全体のバランスは「NPOの寄付の集め方」でも整理しています。
  4. 消費税の扱いを確認する:サービス利用の対価としての性格が強い会費(事業収益に区分されるもの)は、他の事業収益と合わせて消費税の課税売上に含まれることがあります。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になるため、事業収益としての会費が多い団体は、課税事業者かどうかを確かめておきます。
  5. 請求・更新の時期を決める:入会時、年度更新時それぞれの請求のタイミングと、未納・退会の扱いを定めます。

会員を継続してもらうための運用

会費は一度決めたら終わりではなく、継続して納めてもらえるかどうかで、団体の財源の安定度が変わります。

  • 更新の案内を、期限の前に送る。 口座振替やクレジットカードでの自動更新を用意すると、手続きの手間による離脱を減らせます。
  • 会費に見合う情報提供をする。 活動報告や会報を、会員が受け取れるものとして定期的に届けます。活動報告の作り方は「NPO法人の活動報告」で扱っています。
  • 未納・退会の扱いを決めておく。 督促の時期、一定期間未納が続いた場合の退会の扱いを、定款や会員規程に定めておくと、社員名簿の管理が煩雑になりません。
  • 会員区分や社員の資格の得喪に関する定款の条項を変える場合は、定款変更の手続きが必要です。 認証・届出の区別と手続きの流れは「NPO法人の定款変更」で整理しています。

会費設計のチェックリスト

  • 会員区分(正会員・賛助会員・利用会員など)を定款に沿って整理した
  • 正会員(社員)の資格の得喪が、定款の必要的記載事項として定められている
  • 区分ごとに、会員が受け取るもの(議決権・会報・サービスなど)を決めた
  • 対価性の強い会費が、事業収益として区分されることを理解している
  • 事業収益としての会費が多い場合、消費税の課税事業者に当たるかを確認した
  • 更新の時期と方法(口座振替・自動更新など)を決めた
  • 未納・退会の扱いを会員規程などに定めた

まとめ

会費の設計は、金額を決める前に会員区分とそれぞれが受け取るものを整理することから始まります。議決権を持つ正会員(社員)の会費と、実質的に寄付に近い賛助会員の会費、サービスの対価としての会費とでは、会計上の区分が異なります。区分を明確にしたうえで金額と更新の仕組みを設計し、会員への情報提供を続けることが、会費を毎年の安定した財源にする土台になります。

参考資料